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さよなら [ 27/29 ]





くらくらする頭を押さえて、いままで一体なにがあったのか整理する。
幼い頃のわたしと銀時と晋助と小太郎に会って。言うなればもう一度自分の人生を生きたのだ。長い夢のようにも思えるし、本当にあのときにタイムスリップしたのかもしれない。怪我をした腕はまだわずかに疼く。

どちらにせよ、わたしは今の自分が生きているこの江戸に戻ってきたのだ。
ここには天人がはびこり、先生はいなくなって、昔の仲間の行方は知れない。もうあのときとは違う。


「…」


枕元にある時計で時刻を確認すれば、わたしがここにいたときと日にちも時間も変わってはいない。
やっぱり夢だったのかも

夢でも、なんでもわたしにはやらなきゃいけないことがある。会いたい人がいる。言わなければいけない言葉がある。


布団を抜け出して、身支度を整えて家を出る。どこにいるかなんてわからないけれど、きっと会える気がした。
この江戸のどこかにきっとあいつはいる。


「あの、すいません」
「なんだい?」
「銀色の髪の男を知りませんか?どんな情報でもかまわないので、教えてください」


道行く人に尋ねる。
広い江戸で巡り会えるほうがきっと奇跡に近い。それでも諦めるわけにはいかないから




「疲れた……」


とは言ってもさすがにいつまでも歩き回ることもできないので、休憩にと近くにあった甘味屋に入る。
お茶とお団子を注文してほっと一息。ずるずると温かいお茶を啜りながらひとつのある考えが思いつく。


「あの、すいません」
「はい」
「この近くに銀色の髪をした侍っていませんかね?」


甘いものは昔から大好きだったあいつならきっと甘味屋に足を運ぶだろう。小さな希望を胸に、店員さんに尋ねた。


「坂田さんのことかな」
「っ!そう、その人!」
「えーと、この先に万事屋銀ちゃんってお店があるんですけどね。そこにいますよ」


万屋屋って……
まさかお店を経営してるとは思ってもみなかった。
店員さんにお礼を言い、とにかくその場所を目指す。

数十分ほど歩けば、でかでかと大きな看板に『万屋屋銀ちゃん』と掲げられている。
ようやく、ここまで来たんだ。わずかに足が震える。


「ちょっと銀さん鍵開けてくださいよ」
「うっせーな、俺だって両手にトイレットペーパー持ってんだよ。おい神楽!お前ほとんど手ぶらだろ、開けろ」
「わかったアル」


視界に現れたのは見知った顔と、わたしの知らないふたり。お店に行こうとした足はそこで止まる。やいのやいのと会話をしてその3人が家の中へと消えた。

わたしの知らない銀時

そんなことは当然なのだ。わたし達が別れてから今まで銀時には銀時の世界があった。わかっていた、わかったつもりでいた
会いたい、と思っていた気持ちが不安へと変わる。もう銀時のなかではわたしは終わった存在なのかもしれない。幸せに過ごしているのに、あの時を知るわたしが現れたら迷惑だって思うんじゃないか。


「あんた、なんか此処に用でもあるのかい?」


立ち尽くしていると、煙草をくわえた女性がこちらを見ていた。たぶんこのスナックの人なんだろう


「え、あ、ごめんなさい」
「見ない顔だねえ…銀時の知り合いかい?」
「……ええまあ」


嘘をついても仕方がないので素直に頷くと、そうかいと言って上を向いた。


「おいこらくそ天パァァ!あんたに客だよ!!」
「ちょ、待っ」
「うっせんだよばばあァァァァ!近所迷わ…く……」


制止するも時すでに遅く。目をまんまるに見開いた銀時に、小さくため息を落とした。



さよならの続き




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