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過去 [ 1/29 ]





その昔、あたしは攘夷志士として活躍していた。異種である天人を追い出すために刀を振り回し、戦った。そんな甲斐虚しく、幕府は天人と手を組みあたしたちの戦う意味は無くなった。それでもこうして普通に定職に就いて生活しているのだから、人生って不思議だ。



お疲れ様でーす、と声をかけて薄暗くなった道を一人歩く。夏というほど暑くなく、春というほどおだやかじゃない陽気に包まれながら昔をおもった。
戦争が終わってからあたしと晋助と小太郎と辰馬と銀時は離ればなれになった。最近では晋助と小太郎の指名手配の紙を発見した。あとのもじゃもじゃ二人は分からないが、あいつらなら生きているだろう。


あの頃に戻ってみたい、と唐突に思った。血なまぐさい争いを繰り返す前、あたしたちの毎日は楽しかった。まだ辰馬はいなくて、本当に餓鬼だったあの頃。そして無くしたものもまだ存在していたとき。
あー、あん時は若かったなあ。家のドアを開けながら当時を思い出す。




晋助は確かあたしと同じくらいの身長でよく銀時にからかわれてたっけ。そういう時に必ず小太郎が二人を仲裁して喧嘩に巻き込まれて。あたしは周りで煽りながらそれを見ていた。
戻れるわけないのに。通りすぎた過去は振り返らないと決めたじゃないか。電気を消して、少しだけ冷えた布団に潜りこむ。そうして自分の想いに蓋をするように、そっと瞼を閉じた。



過去にしてしまうにはあまりにもあざやかすぎる




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