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つないで [ 18/29 ]





「あっはっはっは!5日ぶりの飯は旨いのー」
「…おいヅラァ、銀時の頭茶色くなってんぞ」
「俺ここォォォォ!てめ、わざと言ってんだろ高杉コラ」
「お前ら、静かにせんか!銀時の髪色が変わったくらいで」
「ヅラァァァ!!」
「………なにしてんの」


ギャイギャイうるさいのはいつものことだけど、その騒ぎの中で普段聞かない声が混じっていたので、隣の部屋からひょいと顔を出した。掴みかかって今にも喧嘩を始めそうな3人の後ろに、くるくるの茶色い髪の毛が見えた。


「た、辰馬!?」
「……おんしなぜわしの名前を知っちょる」
「名前知り合いか?」
「いや、あの」


辰馬と小太郎の不思議そうな表情に、勢いに任せて言ってしまった一言をうらむ。横から晋助の厳しい視線がしてなんとも気まずくなる。


「て、いうかなんで辰…この人がいんの?」
「ああ。実はここのまん前に倒れていたんでな」
「警戒心ゼロだなお前ェは!敵だとか思わねーのか」
「天パに悪いやつはいないと豪語していたのは貴様だろう、銀時。それに腹が減っているようなので放っておくわけにもいかなくてな」


うぐっと黙りこむ銀時を横目に辰馬を見つめる。いつかは出会うと思っていたけど。…ああでも変わってない、ね


「おなごに見つめられるのはいいもんじゃのー」
「っあ、ごめん…なさい」


あたしだけが辰馬を知っているのであって、あっちは初対面なのだ。それをまじまじと見るなんて失礼すぎる。あんまり関わらないほうがいいかも、と銀時の背中に隠れた。
小太郎と辰馬はすでに仲良くなっていて、銀時は同じような髪型をした仲間を見つけたと思っているらしく興味を持っているみたいだ。晋助はいつもと変わらないポーカーフェイスで縁側にひとり座っている。


「えー、と辰馬だっけか。お前なんでそんなとこで倒れてたんだよ」
「言われてみれば気になるな。近隣に住んでいる村人はすでに避難しているはずだが」


小太郎と銀時が半場疑っているような口ぶりで質問を投げかける。口一杯に頬張ったごはんを飲み込んで辰馬がにこりと笑って言う。


「おんしらの仲間になりたいんじゃ」




空気が凍る、というより時間が止まったような。一瞬誰もが動きを止めて辰馬を見つめた。相変わらず辰馬はにやにや笑っていたけど、その瞳はみんなの視線と同じくらい真剣。


「おんしらの言う攘夷というやつにわしも参加させてくれんか」


腕は立つはずじゃ。そう続けてお椀を床に置いた。


「………刀は振れんのか」


今まで黙っていた晋助が口を開いて、はじめて辰馬の目を見た。ゆっくり頷くのを見てさらに問う。


「遊びじゃねェんだぞ」
「わかっちょる」
「人を、殺すんだ」
「ああ」
「自分が明日死ぬかもしれねェ。仲間が目の前で殺られるかもしれねェ。それでも俺たちと行くって言うのか」
「……覚悟はできちょる」


ごくり、と誰かの喉が鳴る音がかすかに聞こえる。ふと突然に晋助がくつくつと笑いだした。


「おもしれェ。……俺は高杉晋助だ」
「おい、高杉本気かよ!」
「今さら言ったって引くやつに見えるか?こりゃあてこでも動かねーぜ」
「ッチ、もう知らねェぞ俺ァ。…………坂田銀時だ」
「まったく、どいつもこいつも。…桂小太郎だ、よろしくな坂本」


全員の名前を聞いてまたにこりと辰馬は笑って、今度はあたしのほうに顔を向けた。


「おんしの名前は?」


そうしてわたしは教えるのは2度目になる自分の名前を口にした。



手をつないでいようたとえ世界が滅びても




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