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「なにを隠してる」


射るような目。もう逃げられはしない。


「信じてもらえないと思うけど」
「話せ」
「…未来から来たって言ったら笑う?」
「みらい?」


怪訝な顔をしてあたしを見やる。そりゃそうか。信じろという方が無理がある。最初にここに着いたときに銀時に同じことを話してバカにされたことを思い出した。


「未来のあたしは25歳。もちろん晋助も銀時もね」
「じゃあ、お前は…」
「外見は17だけど中身はもうとっくに成人してる」


それだけ言うと晋助はぐっと押し黙り、なにかを考えるような仕草を見せた。年齢だけ言ってはい信じます、という男でないことは十分わかってる。


「もし未来から来たっつうなら、当然未来で起きたことを知ってるはずだ」
「…うん」
「この戦争はどうなる?」


やっぱり。ある程度覚悟はできていたと思っていたのに。走馬灯のように攘夷戦争のことがよみがえる。
大勢の天人や空を黒く染める船。跳ね返る血しぶき。地面にころがる仲間の屍。


「…言えない」
「あ?」
「言えないよ、そんなこと!」


言ったら晋助はどうするの。あたしたちは負けた。仲間は大勢死にたえ、先生を奪ったこの世界に屈し、ついには己を守る刀でさえ奪われたと。そんなこと、言えるわけがない


「本当に未来から来たのか」「うん。…でも、こうやってなにも言えないままも信じてもらえるとは思ってない」


今度はあたしの方から晋助を真っ直ぐに見つめる。信じられる信じられない信じる信じない。たったそれだけのこと、それほどのこと。




「高杉ー、名前ー」


がさがさと草をかき分けるような音が聞こえて、その方向に目をやると銀時の紅い瞳がぼうっと闇に浮かんでいた。


「なにしてんのお前ら」
「…別になんでもねェよ」


俺ァ戻る。一言告げてくるりと背中を向ける晋助。声をかける間もなく、すぐに夜の中に消えていってしまった。


「…もしかして俺空気読めないやつ?」
「ちょっとね」
「悪ィ、な」
「大した話じゃないから。ほら、あたし達も戻ろ」
「……おう」


いまだに浮かない顔をしている銀時を励ますように肩を叩く。気にしなくていーのに。呆れたように笑ってそうこぼした。顔を上げた銀時の目はいつものような死んだ魚の目なんかじゃなく、真剣そのもの。


「気にするっつーの」
「…銀時?」


なにか意味を含んだその言葉の意味がわからないまま、基地に着いた。はやく飯にするぞ、と急かす小太郎の相手をしながらしこりの残った胸を無理やりなだめた



影追い




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