世界 [ 12/29 ]
「俺は許さねェ。先生を殺したこの世を」
「高杉」
「俺は戦う」
あたし達の傷がまだ癒えていないころ、晋助がぼそりと呟いた。真っ先に攘夷戦争に参加しようとしたのは他でもない、晋助だった。あんなに崇拝していた先生が殺されたのだから仕方ないことだ。だけど。
「…ちょっと待って」
「なんだ」
「戦うなんて、あたしは反対」
あの時とは違う。あたしは今、なにもかも知っている。だから止める、未来を変える。先生が殺されると分かっていながら何もできなかった。でも、もう失いたくない。
「名前、テメェ正気か?」
「うん」
「お前は、先生を殺したやつが憎くないのかよ!先生を殺したこの世を変えたくないのかよ!」
「あたしだって憎いよ!でも戦ったって解決しない。仲間がいなくなるだけ」
お願い、戦争なんて止めてよ。あの時どれだけ仲間が死んでいったか思い出したくもない。
「…俺は高杉の意見に賛成」
「銀時、」
「俺もだ」
「小太郎、」
ちょっと待ってよ、と掠れた声で言う。あたしを見つめる3人の瞳には強い力があった。
「ねえ、よく考えてよ。幕府が必ずしもあたし達の味方になるとは限らないし、仲間がたくさん死ぬかもしれないんだよ?それでもいいって言うの?」
「お前がそんなに反対するなら、戦わなきゃいいだけの話だ」
晋助があたしを射るように見て、そして最後にこう続けた。
「俺達はこれからお前とは違う道を行く。さよならだ、名前」
くるり、と背を向けた晋助の後を追って銀時も小太郎もあたしの前から去っていった。もう、制止の声も届かない距離にあの3人はいってしまった。
世界を守るために
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