マヨ漬け。 | ナノ
どこで買ったの、コレ。先ほど渡されたセーラー服をまじまじと見つめる。殴られたトッシーは部屋の隅でおとなしく座っている。
「ね、トッシー、」
「着てくれるでござるか!?」
話しかけると、ぱあっと顔を明るくして私を見つめてくる。
「いや、そうじゃなくて…これ何処で買ったの?」
「もちろん、秋葉原でござる!他にもトモエちゃんコスチュームとか…やば、萌えるんですけどォォ」
いらないことまでペラペラ喋り、勝手に興奮している。
トモエちゃんって確かトッシーが好きな女の子のキャラクターだったはず。あのコスチュームを想像して、まだセーラー服の方がましかとちょっと思う。
「あの、なまえたん」
おずおずとトッシーが話し出した。急に静かな声で話しだすからつられて私も静かになる。
「僕はあまりなまえたんと一緒にいられないから、僕なりに今日何ができるか一生懸命考えたんだ。そのプレゼントは迷惑だってこと分かってる。でも、」
トッシーが拳をギュッと握りしめる。
「なまえたんの為に選んだんだ。だから、せめて一回は着てほしいでござる…」
「トッシー…」
しゅん、とうなだれて黙りこんでしまった。架空のトッシーの犬の耳がぺたりとふせっているのが見えてしまう。
で、でもセーラー服は私の年齢ではかなり無理がある気が。第一似合う自信がない。(いや似合うのもなんかイヤだけど)
「お願いするでござる…!」
トシが決して見せないであろう潤んだ目で頼まれたら、もう……
「…分かった、着る」
手元のセーラー服を握りしめ、覚悟を決めた。
そんなにお願いされたら引き受けないわけにはいかない。第一トッシーのかわいさに抵抗できるはずがないというのに。
「なまえたーん!!」
ガバッとトッシーが抱き着いてきた。どうやら泣きながら喜んでいるみたいだ。
こんなに喜んでくれるとは思っていなかったので、面食らいながらも嬉しくなる。それでもセーラー服に目を移すとやっぱり気は重くなる。