マヨ漬け。 | ナノ
カチャカチャ
食器がぶつかる音しかしない。結局私の家までずっと無言。今は私がごはんの用意をしているけど、トシは一言も話さない。
横目でチラリとトシを見ると、肘をついてテレビを見ていた。
「今日も泊まるの?」
このままじゃいけない、と何気なく話しかける。
「知らねェ」
ぶっきらぼうに答えるトシになんだか脱力してしまう。なんなの、その言い方。めったに一緒にいられないから、今日ぐらいは喧嘩しないでいたかったのに。
だから、私から話しかけたのに。仲良く楽しく一緒にいたいっていう私の気持ち、すこしぐらいわかってくれてもいいと思うけど。
それからまた長い長い沈黙。…というか、トシがこんなに怒るなんて珍しい。私なんかしたっけ。
ごはんを作る手を止め、考えてみる。トシが不機嫌になったのは、あのピンクな本のとき。……もしかして。
「ねぇ、トシ。」
「ンだよ」
「本当はちょっと妬いたよ」
振り返ってトシを見る。目を大きく見開いたまま動きは止まっていた。クスリと笑ってゆっくりトシに近づく。
「妬いて欲しかったんでしょ?」
トシの顔を覗きこむようにすると、心なしか顔が赤い。
「それくらいで機嫌悪くならないでよ」
コツンと頭を小突くとむすりと口を尖らせてまるで子どもみたい。
「…好きな女には愛されたいんだよ」
耳まで赤くなったトシの頬に唇をよせて、好きだよと呟いた。俺も、と言うトシの顔が近づいてそっと目を閉じると唇に熱を感じた。本当に小さなことで不機嫌になるトシがどうしようもなくかわいくて、愛しくなった。