マヨ漬け。 | ナノ
何をこんなに意地になっているのか。寂しい、会いたいと素直に言えばいいのに。連絡を断って今日で一体何日目だろう。相変わらず私の携帯は黙ったまま。小さくため息を吐き、待ち人を待つ。
「遅れてごめんなさい」
仕事の片付けがあって。急いで来たのか少し息の荒いお妙ちゃんに気にしないでと手を振る。
今日は女2人で飲もうとお妙ちゃんに誘われたのだ。
先日の知り合いの銀髪が迷惑かけちゃったし。そう言われてあの男を思い出す。なんとも不思議な人だった。お妙ちゃんの誤解が解けたあと依頼があるから、とそそくさと帰っていったのだ。後で聞くと、あの男は万事屋をやっているらしく。何かあったら依頼してあげてねとちゃっかり営業されてしまった。
「何飲む?」
「梅酒とか、いいかも」
メニューを片手にキャイキャイはしゃぐ。やっぱり女の子同士は楽しい。
「なまえちゃん、何か悩んでる?」
「え、」
注文を終えた後、お妙ちゃんに真っ直ぐ顔を見られ、こう言われた。
「違ってたらごめんね。でも、そんな顔してたから」
「…あのね、」
たぶん何かにすがりたかったんだと思う。1人で悩むのはもう疲れた。誰かにすべて話してしまいたかった。
「連絡しちゃえばいいじゃない」
「…へ?」
「プライドとかそんなもの捨てて、思いきり怒鳴ってやんなさい。ね?」
ずっと悩んでいた私がバカみたいだ。そうだ、もう止めよう。こんなつまらない意地やプライドは捨ててしまおう。会いたいから会う。声が聞きたいから電話する。欲求に従えば、答えは出るでしょう?
「お妙ちゃん、ありがと」
そう言うと、にこりと笑ってくれた。
(久しぶりに手にした携帯はなんだか重たい)