マヨ漬け。 | ナノ
トシと女の人が歩いているシーンがちらつく。
…もう、ダメなのかな。
頭を振ってそんな考えを追い出す。いくら考えても答えなんてでない不毛なことなんて、考えるだけで時間の無駄。
「なまえちゃーん、お客さん!」
「はい」
今は仕事中。
店長に呼ばれ、慌ててテーブルへ注文を取りに行く。
「いらっしゃいま、せ」
「あら、なまえちゃん?」
座っていたのはお妙ちゃん。以前知り合った子で、たまに会ったりしている。
「久しぶりね」
「うん、元気だった?」
キャイキャイと盛り上がってしまうが、ここはお店で私は仕事中。店長からの視線に気づき、口をつむぐ。
「ゴメン、また後でね」
とりあえず注文を取り、厨房へ戻る。店長の小言が私を待っていた。
仕事をなんとか終え、帰り支度を始める。すると携帯がチカチカ光っているのが見えた。私の家で飲みなおそうというお妙ちゃんからのメールで、早速お酒を買ってお妙ちゃんの家へ向かう。
数時間話をしながらお酒を飲む。
「え、弟くんいるの?」
「そうなの。そろそろ帰ってくるんじゃないかしら」
少し赤くなった顔でチラリと時計を見るお妙ちゃん。
「ただいま」
「うーい、帰ったぞ」
弟くんらしき人の声と、男の人の声。お帰りなさいとお妙ちゃんが立ち上がり、玄関へ向かう。
何やら話す声が聞こえるが、客人である私は深く追求できない。玄関の方を気にしながらお酒を手にとる。
「ちょ、銀さんどこ行くんですか!」
ドタドタと音が聞こえ、後ろを振り返る。銀髪の男が赤くなった顔でこちらを見つめている。
「ど、どうも」
お妙ちゃんの弟さん…じゃあないよね?とりあえず挨拶をするが、相手の男は黙ったまま。
「銀さん!ってアレ?」
「あ、お邪魔してます。お妙ちゃんの友達の##name_2##なまえです」
「僕は志村新八です。姉がいつもお世話になってます」
銀髪を追いかけてきたらしい眼鏡の男の子。たぶん、この子が弟くん。(お妙ちゃんにどこか似てるし)
「なんだ姉ちゃん、あのゴリラ女の知り合いか?」
どすんと私の隣に座り、お酒を手にとる銀髪。
「ゴリラ女って…」
「あー、熱い眠いだるい」
ごろりと寝そべる男。ちょ、そこ私の足!膝枕になってるうう!!
ゆさゆさと揺するがすでに夢の中らしく。助けを呼ぼうにも近くには誰もいない。
え、何よこの状況。残念ながら私一人でこの窮地を脱出しなければならないらしい。