いろいろ | ナノ
*もしも先生が生きてたら
*先生→30代、土方さん→20代後半
「先生、さよーならー」
「はい、さようなら。気をつけて帰ってくださいね」
ぶんぶん手を振って帰っていく子どもたちの背中を先生と一緒に見送る。数十年前のころの、銀時くんや高杉くんそして小太郎くんの姿と重なってまたすこし笑ってしまう。
「…さて、そろそろ中に入りましょうか。体が冷えてしまいます」
「そうですね」
寒さのせいかほんのり赤くなった指先を擦り合わせながら玄関まで向かうと、じゃりっと砂の音がした。
「よォ」
「………十四朗さん」
ふっと物陰から出てきたのは真選組副長の土方十四朗さんだった。煙草の煙をくゆらせながら片手を挙げたので応えるように、頭を下げた。
「お仕事お疲れさまです」
「ああ」
「あ、これから夕御飯なんですけどよかったら十四朗さんもご一緒にどうですか?」
十四朗さんにはなにかとお世話になることが多いし、せっかくならと誘ってみる。なにより人数が多いほうが食事は楽しいから。
「ちょうど仕事もねェしな…邪魔す」
「土方さん」
十四朗さんが言い終える前に先生がやんわりと口をはさむ。
怒っているようなわけじゃないけど、なんとなく空気がぴりぴりしている…気がする。
「お仕事お忙しいんじゃないんですか?先日大きなテロ組織の摘発があったとお聞きしましたが」
「……その情報は一般人には公開されていないはずだ」
「ちょっと風の噂で」
なにやら二人の間に流れる空気が穏やかでないことに気づき、慌てて遮るようにして立つ。
「ま、まあまあ。…じゃあ十四朗さんはお忙しいんですね。すいませんそんな時に誘ってしまって」
「え、いや」
「残念ですね。まあ今日はふたりでゆっくりしましょう」
「そうですね」
そっと肩に手を回されて誘導される。それを見た十四朗さんの目がいつも以上につり上がっていて、何事かと足を止めた。
「…し、仕事はいまちょうど落ち着いたところだ。屯所のほうは近藤さんと総悟に任せてある」
「そうなんですか!じゃあぜひ上がっていってください」
「ああ、悪いな」
「いえ。ご飯多めに作っちゃったんで助かります」
どうぞ、と案内して中に入る。十四朗さんを居間に案内してから、わたしは台所へと急ぐ。
もう一度お味噌汁を暖め直し、その間におかずを盛りつけていく。
「すこし待っててくださいね」
「ああ」
「はい」
鼻歌まじりに食事をつくるその後ろでふたりがにらみ合いをしていることは全く知らずにいた。