いろいろ | ナノ


「あー、疲れたァ」
「おかえり」

仕事から帰ってきた銀時を玄関まで迎えにいくも、わたしに見向きもせずすぐにリビングへ行ってしまった。寂しいと感じながらも慌てて背中を追いかける。

「なんかあったの?」
「説明すんのめんどい」

ネクタイやら靴下やらぽんぽん投げ捨ててベッドに寝そべる銀髪に若干いらいらする。
…仕事が大変だったんだと自分に必死に言い聞かせる。そうじゃないと憎まれ口たたきそうだったから。

「メシはー?」
「あ、ごめん。まだ」

あと数十分はかかると思う、と壁にかけた時計を見ながらそう告げるとあからさまに嫌な顔をされた。しかも小さな舌打ち付き。

「電車乗ったってメールしたろ?なんで俺が帰ってくる時間逆算してメシ作んねえんだよ」

仕方ない、今日はちょっと機嫌悪いんだよ。だから銀時だってわざとじゃない。…わかってるけど、さ。
聞いてほしいことがあった。今日はすこしいやなことがあったから銀時に話したかった。それに銀時だって仕事で疲れてるだろうから好きなものをたくさん作って待ってた。ふんぱつしてスーパーでちょっと高いプリンも買って冷蔵庫に入れておいた。

「…じゃあもういいよ」
「あ?」
「気に入らないなら出てけばいいじゃん!他の女のとこに行けば?」
「なに言って…ちょ、おい!」

銀時の腕をつかんで玄関までひっぱる。ドアの向こうへと押し出す瞬間に、ぽろりと涙がこぼれた。それを見た銀時の目が大きく見開かれていく。

「おま」

なにか言い終える前にバタンとドアを閉じてやった。ふん、ざまみろ。
さっさとリビングへ戻って作りかけの料理の続きをする。その間にもどんどん扉を叩く音やチャイムの音がするけど気にしない。ケータイも財布も持ってないから行くとこもないから一晩中外に出していたらどうなるんだろう。

ひとりで料理をつつきながらぽたぽたとしょっぱいものが目から流れ落ちた。
ホントはこんな風になるはずじゃなかった。わたしの想像じゃ二人仲良く食卓を囲んで他愛ない話をして笑っていたはずなのに。なんでこんなことになってんだろ。

「銀時のばか」

ただいまって言ったらおかえりって返してほしいのに。脱ぎ捨てた靴下は洗濯かごに入れろって何度も注意したのに。
でも、わたしも銀時のメールがあったあとテレビ見てごろごろしちゃったし、疲れてたなら先にお風呂でも入れさせてリラックスさせればよかったのかも。それにちょっと、ほんのちょっとだけ言い過ぎた…気がする。

すこししょっぱいごはんを食べながら、外で途方に暮れているであろう銀髪を想う。
食べ終わったらドアを開けて思いきり飛びついて、それでごめんって言おう。


title りら



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -