自習中、右隣からやけに視線を感じる。え、ちょっと、何……。なんかついてる…のかな。いや別に…何も食べてないし……。シャーペンを動かす手が止まる。めっちゃ、めっちゃ見られてるよね、俺……

「赤葦くんさあ〜」
「えっ、あ、何」

思わずびくりとしてしまう。バレて、ないかな。バレて…ないといいけど。正直俺は、隣の席の彼女のことが気になっていた。だから少し緊張する。俺、なんか変なこと、したっけ?してないと…いいんだけど…

「出席番号一番以外なったことないでしょ?」
「え、ああ…まあ…」
「いいよね、あたし一番なってみたくてさ」

いいこととかないよ、と言おうとした。だけどみょうじさんは後ろの席の女子と話していたから飲み込んだ。なんか、うん、なんだろう。肩の荷が下りた感じだ。いやでも、彼女とこんなに話したこと、初めてなような…。あっそういえば、一番以外なったこと、あるな。ええと、確か…中二の時、誰だっけ、俺の前だった…ああそうだ、青木?

「あのさ、」
「ん?」
「一番じゃなかったこと、あるよ」
「まじ?」
「うん、マジ…俺の前に青木がいて、さ」

声も顔もひきつっていた気がするけど、みょうじさんは何故か感動したような顔をしていた。そんなに驚くことかな…

「なるほどねー!そいえばさー四組に相田っていたね。同じクラスになったら終わりじゃん!」
「終わりって…」
「でもいいねーいちばん。憧れるねー」
「そうかな…」

今だけは一番で良かったと思える、けど普段は特にいいこともなくてなんでこんなに羨ましがられるのかがわからなかった。まあいっか、喋れたし…

「あ、赤葦くんと結婚すればよくない?」

は?

「そしたら今すぐいちばんになれるじゃん」
「い、いや…俺より………相田の方が………確実………じゃないかな……」
「あ、そっか」

馬鹿か俺は!



赤葦くんがコミュ障っぽくてすみません