一期の手が私の胸に触れる、その手は手袋をはめているしわたしも着物を着込んでいる。それなのに体の奥がどうしようもなく疼くのは何故だろう。直に触れられているわけでもないのに。じっとりとした金色の目がわたしを舐めるように見つめる。一期のこんな瞳など、果たして見たことがあったろうか。彼の親指がすうと唇を撫でた。ああ唇を合わせるのだな、と合点して目を瞑る。
「ああずっと、こうしてみたいと思っておりました」
唇が合わさる前に一期がそう言い、何を言うかと目を開けた途端に舌を吸われた。恍惚の声だった。あくまで落ち着いた風を装ってはいても、欲に濡れているのが隠せてはいない。ぼうっとしていく頭で彼は今までわたしをどんな目で見ていたのだろうと考えた。答えは、彼の口振り手振りから十分にわかるとはいえ。息苦しさに耐えかねて一期に手を伸ばすと、そのまま手首をつかまれて首に回された。たまらず抱きついた、もう彼を求める以外にわたしに選択肢は残されていない。
「貴方は些か扇情的すぎるのです、目に毒だ。本当を言うと私以外の目には触れさせたくないのです」
息が上がる。あまりにも情熱的だった。両の手のひらでわたしの顔を撫でる彼の顔は、見たこともないような表情をしていた。抱かれたいと思った。彼が神でわたしが人間だとか、わたしが主で彼が臣下なのだとか、もうこの際どうでもいいと思った。一期もただの人間ではないか。人の娘を前にしてこのような目をする神がいてたまるものか。一期の手がわたしの服を脱がすのに抵抗しようとは思わなかった。わたしの胸元が露わになって、ほのかに頬を紅潮させた一期はさらに興奮に身を震わせた。かすかに震える手つきで、乳房に伸びてくる一期の手。
「きっと柔らかな乳房なのだろうと、そう思っていましたよ」