「君の瞳に僕以外が映るのが気に入らないんだよ、浅はかだと思うなら笑えばいい。人の心というのはなかなかに難しく面白いものだ。今なら忠興殿のお心もよくわかるよ。僕はね、実を言うと忠興殿の嫉妬深さというか、なんだろうね?独占欲とでも言えば足りるかな。よくわからなかったんだよ。天下ならまだしも、なんてね。刀のくせにと思うかい?君は、たかが刀が何を言うかと、そう思うかい?でも考えても見てごらんよ。人の形を与えたもうたのは他でもない君だ。今僕を振るうのはこの身体以前に君だろう。当然ではないかい、狂おしいほど君を思ってしまうのは」
歌仙は早口にまくし立てたが、私に何か言い返せる余裕は物理的にも存在しなかった。歌仙の印象の割に男らしい手が私の首を絞めるからだ。私の着物は無残にも剥ぎ取られ、下半身は彼のもので痛いほど満たされている。痛みを与えられすぎて、私の頭は麻痺していた。苦しい、痛い、やめて、言いたいことは山ほどあったように思うが口からは乾いた嗚咽しか漏れない。膣を擦られて湧き上がる快感の声も、彼は許してはくれないから。首を強く締めるたびに私の中で質量を増すそれに、私は歌仙兼定という人間(刀というべきか)をいささか見誤っていたように思う。いつもはあれほど穏やかに笑うのに。あれほどやさしく触れるのに。私の知っていた歌仙はどこにもいなかったように思えた。それなのに彼が私を思う気持ちは、愛しているという言葉は、過剰なほどに感じるのだ。不思議だ。優しい言葉をかけられて、柔らかに笑いかけられるときよりもずっと、ずっと愛されていると感じる。
精をぶちまけてしまえば歌仙はいつも落ち着いた。人になりきれない彼の感情の吐露だから、私は甘んじて受けようと思うし気持ちよかったとさえ思うのだ。首輪のように残る赤い痕をいとおしいとすら思ってしまうなんて、歌仙は知っているのだろうか。