国広くんの手が頬をなでた。躊躇いがちな手つきのせいで少しくすぐったい。名前を呼ばれると、その低い掠れた声に体が疼いた。彼が無言でキスがしたいと訴えている。もちろん断る理由はない。わたしとしても、ここ最近彼には長く遠征の部隊長を任せていたから国広くんが恋しかった。
「ん…いいよ」
わたしがこう言わないとまともにキスすらしてくれないのだから国広くんはいじらしい。そのくせいったん始めると待ってましたと言わんばかりに情熱的だ。何度も深く口づけをされる。はじめは控えめに絡んできた舌がどんどん激しくわたしを求めてくる。国広くんの片方の手はわたしと固く繋がれ、もう片方はわたしの身体を丁寧に探っていく。ようやく解放されたときには酸欠で視界が霞んでいた。少し乾燥していた国広くんの唇もすっかり潤っている。
「なまえ、」
ぎゅうと抱きしめられる。きっと寂しかったんだろう。遠征が思いの外長引いたのが国広くんにも堪えたのか。彼はとても寂しがりやだから。
「わたしもね、さみしかったよ」
「…どうして」
「え〜、言うの?」
「言ってくれなければわからない」
わたしの口から言ってほしいだけのくせに。早く言えと腕に力をこめられる。肩口にぐりぐり擦り付けられる額。いたいいたい、痛いってば。
「国広くんに会いたかったんだってば」
「俺も、俺もずっと…なまえが恋しかった…」
こんな風に言われるともう遠征に出したくなくなっちゃうじゃん。よしよしと彼の背中を撫でた。明日は一日中、近侍としてそばにいてもらおう、かな。