大学生

「みょうじさん、○○大だったっけ。なんの勉強してるの?」
な、何言ってるんだ月本くん。そんなのよ〜く知ってるじゃん。なんなの!友達に誘われて渋々合コンについていったらこれだ。完全に他人のフリをされて、の割に距離は全くいつもと変わらない。楽しんでる、楽しんでるよ月本くん…!相手の中にニコニコ笑う月本くんがいたときはもう口から心臓が出るかと思ったけど、まさかこんなことをしてくるとは。こんな性格だっけ?少なくとも高校生のときはちょっと生意気なところはあってももっと大人しい子だった!
「サークル、何入ってるの?僕卓球なんだけど」
「つ、月本くん」
「なあに」
「何で他人のフリするの」
うん?と言う月本くんは完全にしらばっくれて素っ頓狂な顔してる。名前も高校も学部もサークルも全部知ってるくせに。ていうかわたしの時間割もバイトのシフトも全部知ってるくせに!友達があそこの二人いい感じだねとささやき合ってるのが聞こえる。ちがう、いい感じなんじゃなくて月本くんは彼氏なの!
「勝手に合コン行ったの怒ってる?」
「ううん」
「じゃなんで」
「そういうプレイも悪くないかなって」
月本くんの口からプレイなんていう言葉が出るなんて…!昔に比べて社交的になったし明るくもなったとは思うけどそんなこと月本くんは言わない、言わないもん、たぶん…。ごまかすように月本くんのせいですっかり汗をかいた梅酒のグラスを傾けた。月本くんはそれをニコニコ至極楽しそうに眺めてる。なんだよもう。進むお酒も進みやしない。
「あんまり飲まないんだね。お酒苦手?」
「うるさい」
「もっと飲んだら?潰れても僕がお持ち帰り、してあげるよ」
「酔ってるでしょ!」
何言ってんのー?!ぽかぽか月本くんを叩く。周りからよろしくやってるなと小さな歓声があがった。もちろんお持ち帰りはされました。