審神者の様子が、おかしい。
頬は紅潮して目をとろんと溶かし心なしか息も荒い。熱か?つい先ほどまで体調が悪そうな素振りは見せていなかったように思うが。俺が見逃していただけだろうか。
「どうかしたのか」
「く、国広くん」
声をかけると彼女は大げさなほどに体を震わせた。そんなに驚くようなことか。俺まで驚いた。そんなことより問題なのは彼女の体調、風邪を引かれるようなことがあれば糾弾されるのは近侍であるこの俺だ。なまえはすぐに無理をする。熱があるんだろう、となまえの前髪をかきわけて額に手を当てた。すると彼女はまた大きく体を震わす。びくんと跳ねるという形容があまりにも相応しいその反応に俺はますます彼女の不調を訝しんだ。普段とあまりにも違いすぎる。
「なまえ?大丈夫か?」
「からだが…からだが熱いのぉ…」
俺の胸になまえの華奢な体がなだれこむ。やっぱり熱があるんじゃないか、本当に彼女の体は火照って熱を帯びていた。早く休ませてやろうと彼女の腰を支えようとしたそのとき
「あんっ」
甲高い嬌声に耳を疑った。初めて聞く甘ったるい声に心臓が早鐘を打つ。何か変なものでも…辺りを見回すと文机にころがるちいさな瓶。まさか。
「おいあんた、何を」
「はあ……国広くん、あっ…さわって」
「は?」
「さわって、さわって…」
状況がうまく飲み込めないが、潤んだ目でおねがいと懇願されれば断れなかった。触って、とはどこを、どういうふうに。伸ばした手の行き場がない。腰をきゅうと掴むなまえの手がかすかに震えているのは気のせいか。意を決してそっと彼女の腰に手を滑らせてみた。もっと、と震える声が言う。いや、もっとと言われても、これ以上は。
戸惑っていると力なくなまえが半身を起こした。大丈夫かと声をかけるより先に、彼女は着物の襟に手をかけた。服を脱ぐつもりか、おい、
「ね、さわって、おねがい…体が熱いの」
手を掴まれて胸まで誘導される。指先が柔らかな肉に沈む感触に思わず生唾を飲んだ。荒い息のなまえに導かれて先端にまで手を伸ばしてしまう。桃色のそれに触れるとなまえは声にならない喘ぎを漏らした。ここが、いいのか?両方いじってやるとさらによがった。ここがいいんだろうか、
「んあ、んっ、はあ、くにひろ、くん…なめて…」
舐める?ここをか?確かめるようになまえを見上げるが返ってくるのはじっとりとした熱を帯びた視線だけだ。言われるがままに舌を這わせるとなまえの体が大きく跳ねた。口に含んで、吸ってみる。そのたびになまえの甘い喘ぎが耳をつんざいた。
「あっ、んっ、やっ、んあっ」
なまえの華奢な腕が首に巻き付く。舌を這わせる度にぎゅうと力が込められてもっともっとと催促される、俺はどうしたらいいんだ?これでいいのか?だが俺自身、何ともいえない高揚に支配されているのは確かだった。戦場でのあの高ぶりにも似た、これは何だ。
「きもちい、んん、はあ、んっ」
気がつけば俺の手は着物をかいくぐりなまえの太股に手を伸ばしていた。なめらかな肌を滑る度、なまえが甘い声を上げる度、俺の体も熱を持っていくのを感じる。
「国広くん、」
しっとりとした唇が俺のそれに乱暴に重ねられた。本能の赴くままに貪りあう。これが人間の営みというやつか?口の端からどちらともわからぬ唾液がこぼれ落ちた。甘いと感じるのは、気のせいだろうか。
「はあっ…なまえ…」
「えっちしたい、続きしたいよう、国広くうん、」
被る布を引っ張られ、なまえを押し倒す形になる。組み敷かれたなまえを前に思わず、唇に噛みついた。体が半ば勝手に動くのは、やはり人の形を得ているから、なのだろうか。