「大丈夫だって。すぐにもどるから」
わたしが何度そうやってたしなめても、国広は納得しないのかうんともすんとも言わない。がっしりとわたしの腕をつかんで離そうとしない。そろそろ行かなきゃいけないのに、困った。お偉いさんに呼ばれてちょっとだけ元の世界に行かないといけなくなったのだが、せいぜい三日やそこらだ。それなのに今生の別れみたいに…わたしが死にに行くみたいじゃん。
「ねー、そろそろ行かなきゃ」
「………」
まるで小さなこどもの相手をしているみたい。どうしてもわたしに行ってほしくないらしい。わたしだって行きたくないっつうの。偉い人に会うのは疲れるし、怖いし。
「おみやげ買ってくるから、ね?何がいい?なんでもいいよ」
「いらない。何もいらないから、早く帰ってきてくれ」
「えっ、あ、うん」
それじゃあ、と国広はあれだけ渋ったくせにそそくさと帰って行った。え、なにそれ。取り残されたわたしだけが顔を赤くするハメになった。い、行かなきゃ