パッと目が覚めた。携帯を見ると夜中の三時半で、隣では月本くんがスースー小さな寝息をたてている。グースカいびきすらかいて寝相も悪いわたしとは違って、月本くんはおとなしくこじんまりと寝る。今日も気づけば月本くんはわたしのダイナミックな寝相のために端に追いやられて、敷き布団から半分出ていた。ベットだったらとっくに落ちている。ごめんね月本くん…。いつもなら月本くんにチューでもして二度寝するところだけど、今日はやけに目がさえてすぐには眠れそうになかった。起きるには早い丑三つ時。もう二時間もすれば月本くんはランニングに出るから起きるけど。暇だなあ。わたしはごろんと寝返りを打って月本くんに背を向けた。携帯をポチポチいじりながら、眠くなんないかなあとひとりごちて生あくび。
「みょうじさん」
低くかすれた声がして、パジャマの背中が引っ張られて、わたしは携帯のランプを落とした。また寝返りを打って、月本くんの方を向く。あれ、寝てんじゃん。月本くんはさっきとあまり変わらない様子で規則正しい寝息を立てている。それがなんだかおもしろくない。
「んねえー」
ちょっとだけ揺さぶる。月本くんは不機嫌そうな顔になって、目をこすりながらんんと呻き声をだした。ねえー。もう一度揺さぶる。背を向けられた。無視?!おりゃ。携帯攻撃。ピカーッと明るい携帯の画面を向けると月本くんはようやく起きた。眠たげな目でじろりとわたしをにらんだ月本くんは、めちゃくちゃ不機嫌な声でそういうのやめてと言った。眼鏡をしていない月本くんは、よく見えないせいもあって目つきが悪い。ねえかまってよ。わたしがそう言うから月本くんは仕方なくといった感じで枕元の携帯にのっそり手をやった。時間だけ見るとめちゃくちゃデカいため息をつかれる。ごめんて。
「まだ三時半だよ」
「目が覚めちゃった」
「寝ようよ」
「えーー」
「……」
そっぽを向かれた。月本くんはわりと、自分に都合が悪いときは話を聞いてくれない。機嫌が悪いと特に。ていうかもうほとんど寝てやがる。
「つきもとくーん」
仰向けに寝ている月本くんに抱きついて肩におデコをすりすり、かまってのポーズ。すると月本くんはもぞもぞ動いて、わたしを抱きしめ返した。たぶん条件反射だ。しめしめ。
わたしはすっぽりと月本くんの腕の中におさまって、すんすん匂いをかいで、ぬくぬくしあわせをかみしめる。これなら寝てやってもいい。月本くんが背中をなでてどうにか寝かせようとしていることだし。
「背中……」
背中をなでてくれていた月本くんの手が、べろんと出ていたシャツをパジャマに入れた。これもたぶん、無意識。おかげさまでお腹が冷えるなんてことはない。なんてあいされてるんだろう。ふひひ