流れる景色に夢中になり目を輝かせるなまえに目を細める。異国の景色といっても特別目新しいものはないように思うが、彼女にとっては新鮮なのだろう。台湾にも新幹線があることに彼女は大層驚いていた。目に入るもの全てが新しいのか終始忙しなくキョロキョロしている。俺はそんな彼女を暖かく見守る。台湾に来てからというもの、なまえはとても機嫌がいい。鼻歌混じりにスキップなんかして、道もわからないのに俺の先を行って、たまに振り返ったりして。自分が生まれ育った地になまえが来てくれたこと、こうして楽しそうにしてくれていること、それに言いようのない喜びを感じる。 「舜くん舜くん、これから行くのどんなとこ?」 「古い街だよ」 「へえ」 「それから夜になると」 「え、おばけ?」 「違う、屋台がたくさん出るんだ」 一瞬曇ったなまえの顔がすぐに明るくなった。そういえば屋台に行きたいと言っていた。なまえは何を食べさせてもおいしいおいしいと顔を綻ばせる。屋台に並ぶ料理に目移りするなまえは容易に想像できた。本当にかわいいやつだ。 「おいしいごはん?」 「おいしいごはん」 「おいしいごはんかあ〜」 「腹減ってるのか?」 照れくさそうに笑ったなまえが愛おしくて、なまえの頭を撫でる。なんてかわいいんだ、おまえは。着いたらまずなにか食べにいこうか
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