最近健ちゃんには新しい日課ができた。わたしの大きくなったおなかに念を送ることだ。仕事から帰ってくるとすぐ、寝る前も。何もそんなに一生懸命にならなくてもいいのに、健ちゃんは切実らしい。どうも女の子らしいおなかの子が、どうかわたしに似ますように。わたしとしては健ちゃん似でも問題ないし、なにより元気で生まれてきてくれればそれで十分なんだけど。
「神様仏様どうかなまえに似せたってくださいお願いします」
「もーそればっかなんだから」
「アホ!女の子で俺に似とったらかわいそすぎるやろ!」
「大丈夫だって」
難しい顔してハンドパワーを送り続ける健ちゃんに思わず吹き出してしまう。笑い事ちゃうねんでっていやいやいや、超面白いし。でも健ちゃんは健ちゃんなりにこれから生まれてくる子どものことを大切に思ってくれてるんだろう、そう思うとやっぱりうれしい。健ちゃんはいつだってわたしを大切にしてくれたから、この子のこともきっとものすごーく大切にしてくれるに違いない。
「女の子は父親に似る言うからなあ…」
「だからって健ちゃんそっくりそのままはありえないから」
「保険や、保険。あー神様お願いしますどうか俺に似ませんように…」
ここまで念じられたら流石にわたしに似てくれるんじゃないだろうか。出てきてくれるのがたのしみだ。