さっみいの。やんなるな。容赦なく顔に吹き付ける冷たい風に思わず震え上がる。寒いのは苦手だな、マジで。ネックウォーマーに口元を埋めて、息を吐く。あー、さみ。 「お前、寒くね?」 「べつに」 みょうじはマフラーもなにもしてないし、手袋もなし、スカートは短くてタイツもなし。見てるだけで寒い。ありえねー。鼻真っ赤だけどな。みょうじは裸の手に息を吐きかけて、擦りあわせている。寒いんじゃん。 「みょうじ、これ貸そうか?」 ネックウォーマーを脱いでみょうじに差し出した。見てる方が寒いし。みょうじはちらっとこっちを見ただけで、ツンとした顔を逸らした。相変わらずコイツの態度は雪より冷たいぜ全く。耳まで赤くかじかんでるくせに。手くらいつないでやろうかと思っても、奴の手は寒さをしのぐようにしっかり小脇に挟まれていて隙がない。 「おーい」 「いらない」 べろんべろんとネックウォーマーを振る。ツーン。そんなに素っ気なくしなくても。一応俺彼氏なんですけどー。おーーい。 「マフラーとかそういうの、首が鬱陶しくて嫌いなの」 「風邪引くぞ」 「いい」 「お前本ッ当かわいくねえの!」 ネックウォーマーを無理矢理みょうじに被せた。みょうじはいらないやめろとギャーギャー騒いで、俺の手を振り払おうとしても残念俺は野球部、ひ弱なみょうじちゃんには負けないんだなこれが。 「やめてって言ったじゃん」 「はいはい」 みょうじのほっぺを両手で挟むと、冷たかったのかキャッなんてかわいい声を上げた。かーわい。俺がニカッと笑ってみせるとみょうじは思いっきり顔をしかめた後、ふいっと目を逸らす。照れてる証拠だ。皺の寄った眉間にちゅー。 「だはは」 ほっぺが真っ赤なのは寒いからだけだよな、はいはい。かわいいやつ。
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