ご飯食べてる、ちゃんと寝てるの、元気してる。時たま届くなまえちゃんからのメールはまるでお母さんだった。ご飯は無理矢理食べさせられてる。ご飯三杯が絶対だから。心配しなくてもぐっすり寝てる。授業中も…だけど。僕は元気だよ。心の中ではいつもそう返すんだけどなんて文字にしたらいいのかわからなくて、悩んでいるうちに眠くなる。朝起きると練習、ご飯、学校、練習、ご飯、練習、それですっかり忘れてしまってなまえちゃんからのメールをたくさん無視した。学校には慣れたのかとか、友達はできたの、練習はどう、とかいろいろ聞いてくれたのにぼくは確か一軍に上がれたことくらいしか伝えてなかった気がする。声、聞きたいな。がんばれ、と言うなまえちゃんの声は目を閉じればすぐに思い出すことができる。たくさん言ってくれたから。でもちゃんと、声を聞きたい。 「もしもし」 電話の向こうでうわっという声がした。あ、なまえちゃんだ 「えっ、ほんとにさとる?」 「うん」 「どしたの、急に…全然連絡寄越さなかったくせに」 どうしたのと言われても。特になにもないんだけど…とはいえ素直に言うのもなんだか恥ずかしい。声が聞きたくて、なんて。ひさしぶりすぎてなんて言っていいのかいまいちわからなかった。元気にしてるのと言われてうんと返して、楽しいかと聞かれてたからうんと返した。 「暁、なんかしゃべって」 「え?」 「ほら…野球部のこと。全然教えてくれないんだもん」 野球部…なにから話したらいいんだろう。練習のこと、試合のこと、先輩のこと、友達のこと…なまえちゃんはどれだけ知っているんだろう、どこから話せばいいんだろう、メール、ちゃんと返しておけばよかった…あ、 「あのね」 「うん?」 「僕、日本一の投手になれるって言われたよ」 「マジ?」 「うん」 すごい、すごいじゃん、となまえちゃんが言う。自分のことみたいに喜んでくれてるのがわかる。うれしい。青道に受かったときもこんな感じだった。やったね暁、思いっきり野球できるよ…なまえちゃんのその声はいまだにはっきり覚えている。 「だから、待ってて」 「うん」 「まずは甲子園、行くから…」 「うん。絶対見に行くね」 ひさしぶりになまえちゃんと約束をした。僕は早く日本一の投手になりたい。そしたらなまえちゃんを迎えに行く。早くなまえちゃんを迎えに行きたい、なあ。
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