十
(あぁもう!!)
こんなさり気ない優しさと気遣いがあるから離れることができないんだ。
手を伸ばし元親の頭に乗せる。
私がこじゅさんにやってもらったようにクシャクシャッと髪を撫でる。
ビクッと元親の肩が跳ねた。
きっと彼も不安で寂しかっただろう。
私も感じた、いつも隣にあったはずのぬくもりを失った喪失感。
それに怯えている元親は迷子の子供のようで。
「‥もう大丈夫。側にいるよ。‥‥…大好き」
とそっと耳元で囁いた。
再びこんな事がある可能性はゼロではない。
だから思ったことや感じたことは素直に伝えようと思った。
私が薬から解放されたのは元親の存在があったから。
その感謝も勿論あるけれど私はそれ以上に彼が愛おしい。
私が最初で最後の心から仕えた主で愛した人。
「お前が俺を守るんじゃねぇ。逆だ
次は必ず守る、誰にも渡してやらねぇ」
その言葉と元親の大きな腕が私を捕らえる檻となる。
その檻の心地良さと温かさを知ってしまった私は彼以外を主とも恋人とも思えないだろう。
この先何があろうと元親に尽くそうとそっと心で誓いながら目を閉じた。
(お熱いのはいいんだけどよ、周りが見てるぜ?
時と場所は考えな)
(やだ政宗殿。それを知っているから‥…
恥ずかしくて離れられないんですよ!!)
(‥…ぎゅっ)
(ちょっと元親!"ぎゅっ"じゃないから!!
これ以上力込めたら折れる‥!!!)
(やれやれhappyな奴らだぜ)
(‥お、折れる‥!!!)
END