九
「‥頭を上げろ。支えていたのは俺じゃねぇ。
お前を溺愛している鬼の大将だ」
"それだけは忘れるなよ"
と言ってクシャッと頭を撫でられた。
‥…心の中を見透かされたみたい。
私がこじゅさんの姿で安心したんじゃない。
彼の姿を元親に重ねていたから心支えになったんだ。
(まだまだだな、私‥…)
この程度のことも隠せないなんて。
軍師はいつも仮面を被り自分の感情を殺して戦に臨まなければいけない。
(やっぱりこじゅさんは私の憧れ)
彼はきっと私より苦しい判断を迫られたことが何度もあるだろう。
いつも眉間にシワを寄せて難しい顔で悩んでいる姿を軍師として隣に並んでいる間、たくさん見てきた。
私より多く彼の姿を見ているのは政宗殿に違いない。
だからこそ、政宗殿はこじゅさんを信頼して"竜の右目"と呼び、背中を預けるのだろう。
‥…私もそうありたい。
いつか元親を支えて守って、自分の一部だと思ってもらえるようになりたい。
皆に無事を報告し終わり元親の側に戻る。
こちらに戻ってから私の居場所は元親の隣なんだと改めて実感した。
今だって元親はこちらの姿を見つけて駆け寄ってくれる。
「元親!!挨拶終わったよ!」
「ならこっち来い。アイツらの相手は終わりだ。
俺にも霧姫を満喫させろ」
そう言ってギュッと強く抱きしめられる。
周りに政宗殿や伊達軍の人がいる中での行為。
尋常じゃなく顔が火照り恥ずかしい。
「ちょっっ!元親、恥ずかしい‥!」
「いいじゃねぇか。お前は俺のモンだって示しとかねぇと手を出す輩がいるだろーが」
と言いながら私の顔を隠すように角度を変えてくれた。