六
「俺が霧姫を置いていったと思っただと?」
「だ、だって‥目が覚めても隣に誰もいないしあんな事をしちゃったから軍師はクビだと思ったし‥…」
ゴニョゴニョと言葉を濁しながら泣いていた理由を話した。
それを聞いて元親は眉間にシワを寄せながら私の腕の手当をしてくれていた。
出血はあまり酷くなく縫う傷ではなかったことが幸いした。
このまま政宗殿達に合流しても戦える。
「ったく‥俺はそんな理由でお前を捨てたりしねぇよ。大事な姫様で相棒なんだからよ」
「そんな理由って‥…!!私は世間一般じゃ謀反人なんだよ?それを処分しない主がどこにいるって言うの」
「ここにいるだろうが。
第一、お前は俺の部下じゃねぇ。対等な立場だって教えたはずだ!」
「元親はそう思っててもね、私はーーっ」
「いいからちょっと黙ってろ」
元親の顔が目の前まで近づいてきて、真っ赤に染まる頬。
彼はそれを見て満足気に笑うと私の唇を奪う。
もっとびっくりして呼吸を止めてしまった。
慌てて視線を動かすと元親と目が合う。
するとこちらを見ているのが嫌でも目に入って恥ずかしくてぎゅっと目を閉じた。
意外と長いくちづけ。
離れていったから終わりかな、と思って呼吸を再開しようとすると角度を変えてもう一度してくる。
さっきから呼吸を止めたままの私にとっては拷問。
‥すごく苦しい。
あまりの息苦しさに耐え切れず元親の胸を叩く。
すると不満気だが唇を離してくれた。