目を開けると澄み渡った青空と暖かい光を放つ太陽が私を見下ろしていた。
私は木の幹に寄り掛かった状態で眠っていたようだ。
 
今までのことが全て夢だったみたいに感じる。
だけどあれは本当にあった出来事。

それを示すように周りを見渡しても元親はいない。

ほんの少しだけ期待していた。隣に彼がいて私に微笑みかけてくれる事を。

そんな都合のいい事あるわけないのに。

私は元親に刃を向けた。
本来、従者が主人に刃を向けた時点で謀反人として斬り殺されてもおかしくない。

命を助けてもらった事に感謝しないと‥…

なのにどうしてこんなに悲しくて寂しいんだろう。

「っ‥…」

胸がズキズキと痛んで視界が滲む。
本当に痛いのは怪我をしている腕のはずなのに。

血で汚れるのも気にせず首飾りを握り締めた。

私はまだ彼の隣にいたかった。
異国の海を旅するのも楽しみだったし何よりも彼が創る新しい世を見たかった。

抑えきれなかった涙が頬を伝う。




「霧姫?」

 


名前を呼ばれて涙を拭く間もなく顔を上げた。

そこには手に袋を持って驚いた顔をした元親の姿が。

「な、何泣いてんだよ?!」

焦ったように近づいて来て頬の涙を拭う。
元親の顔を見たことでまた涙が込み上げてきてしゃくりあげて子供のように泣いてしまう。

「泣くな、な?お前に泣かれるとどうしていいか分かんねぇんだよ…」






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