「霧姫‥…?何言って‥…」

「ここで戦を仕掛けられたら全滅も免れない。
それが目的なのでしょうけど。
私一人の身で皆が守れるなら喜んで差し出しましょう」

そう言って富嶽から飛び降りようとすると元親に強く手を引かれた。
その目を見ると怒りと戸惑いが色濃く表れていた。

「お前が行く必要はねぇ。
俺達でここを斬り抜けりゃ‥」

「無理だよ、元親。
豊臣はこのまま安芸を潰しにかかるつもりよ。
近くの岸に兵が潜んでいるはず。
それを倒せるほどの力はないわ」

「よく分かってるじゃないか。
君が言った通り、このまま僕達は安芸に進軍するよ」

すぐ隣で息を呑む音が聞こえた。
元親と安芸を治める毛利殿とは好敵手と言ってもいい。
その好敵手を自分の手ではなく他者に奪われるのは悔しいだろう。

「‥彼女は覚悟を決めたみたいだけど元親くんは答えを決めかねているのかな。
僕も鬼じゃない。1日だけ猶予をあげよう」

最後の別れを惜しむといい。

そう言って豊臣軍は姿を消した。





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