真っ暗になった帰り道、白石と並んでゆっくりと歩く。いつもよりずっと遅く歩くこの時間だけは私と白石のふたりきりの時間だったが、今日だけははやく歩きたいとそう思った。
もともと歩くのがそんなに早くない私に歩調を合わせてくれていた白石に、以前謝ったことがあった。もっと早く歩くよ、と。きっと部活でくたくたに疲れているだろう白石ははやく家に帰って休みたいだろうと思い掛けた言葉だった。だが、彼は私の言葉に首を振って「もっとゆっくりでもええくらいや」と微笑んだだけだった。



「なあ、まだ教室で喋りかけたらあかん?」
「…」
「…そっか」

無言の私に白石はそれ以上なにも言わない。なにも聞かない。すべて私の言うことを受け入れてくれる。どうして。なにか言ってよ。聞いてよ。
なんで喋りかけたらあかんの?なんでそんな事いうん?そう、聞きたいこと、聞いてくれれば良いのに。おれはしゃべりたいよ。そう言ってくれれば、私はきっと首を縦に振る、のに。

黙ったままうつむいて歩く私の手が少しだけひんやりとした大きな手につつまれる。
ゆっくりと顔をあげると、私の顔を見た白石は困ったような笑顔でくしゃりと笑った。

* * *



白石から告白をされた時、思わず出てしまった声は「はあ?」というなんとも愛想のないものだった。
だって、どう考えたってあの人気者の白石がこんなに感じの悪い女なんかを好きになるはずがないではないか。
緊張した面持ちの白石を訝しげな目で一瞥して、ため息をついた。


「白石くんって、そういうくだらない遊びしないと思ってた」
「え?」
「なんかの罰ゲーム?それかなにか賭けてる?」
「ば、罰ゲーム…?」

これ以上話してても無駄だと途中で止まっていた棚整理の続きを始める。あの、とかいや、とかごにゃごにゃ呟かれる言葉は無視をして手を動かしていると呆然と立ち尽くしたままの白石が動いたのが視界の端に見えた。
と、同時に動かしていた腕を少しだけ強い力で握られ、びっくりして振り向いてしまった。
予想以上に近い距離に思わず後ずさるがそれを阻止するかのように白石がぐいと距離を詰める。

「ちょ、なに」
「ゲームもなんもしてへん、おれは本気でみょうじさんのことがすきやねん」
「ちょっと、近い…!」
「どうしたら信じてくれるやろか」「いやとりあえず離れて」
「なあ、おれほんまに本気で……」
「っもう!わかった、信じるから離れて!」
「ほんま?」
「ほんま!ほんまやから!!」

ホッとしたような顔で離れていった端正な顔にこちらも深い安堵の息を漏らした。



151105


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