2 出会い


  

「お前は、どんな人が好き?」

「私は…わかりません、出会っていいなと思った人が、運命の人だと思います」

「運命、か。そうか、お前はそういうやつなのか」

「…あなたは?誰…?」

「俺は、」

微睡から目を覚ました。知らない男の人の夢を見た…。でも、なんか知っている。誰だろう、あの人…。
私は眠い眼を擦りながらパジャマからスーツに着替えて朝ごはんを食べる。…めんどくさいからコーンフレークにしよう…。サクサク食べながら夢を思い出す、けどなんかふわふわしている…うーん…。
そんな考え事をしながら電車に乗る。よし、とりあえず今日は金曜だし頑張ろう!と思い改札を出た。

「すいません!」

「はい?」

銀髪の男の人が私に話しかけてきた。
え、髪の毛地毛かな…?紺色のスーツに淡い色のネクタイ、それと眠そうな目の男性がいた。

「これ、あなたの?」

「あ、これ!私のです」

彼が手に持ってきたのは私の定期入れ。改札を潜った後落としたのだろう。

「すみません。ありがとうございます」

「いいえ、朝忙しいっすもんね、じゃあ俺はこれで」

「あ、ありがとうございます…!」

手をひらひらと振りながら歩く彼。すごい髪の毛だったなぁ…。私は定期をみてカバンに入れた。よかった、ありがたいです。さぁ、会社に行こう!カツカツとヒールを鳴らして歩く。

そんな彼女をみて彼は呟く。

「…やっぱりあの女の子か…」

そう言って人混みに消えた。







花金!ということでアルコールやらおつまみやらをスーパーで買って家で宅飲みにしよう、と意気揚々と買い込んだ。
スーパーから帰る時あの神社の前を通る。そうだ、定期を拾ってくれた運をくれたのはもしかしたらこのお狐様のお陰かもしれないと思いふらふらした足取りで向かう。

「今両手は使えないけど、今朝助かりました。ありがとうございます!なんて…」

運が良かっただけなんだ、とそう思い神社を後にしようとした時、「あれ…?」なんて声が聞こえた。

「え?…あ!」

「あぁ!今朝の!こんばんわ」

「こ、こんばんわ!あの…なんでここに?」

「あぁ、俺はここの神主です」

「神主!?」

「…そんな驚くこと、ですか?」

「…い、いえ!」

見た目私と同じくらいなのに、若い神主さんもいるものだ。この髪の色でいいのかな…て思ったけどなるほど、神主だからいいのか。と合致してしまった。

「あ!今朝ありがとうございました、助かりました…」

「いいんだ、…いいんですよ。あなたこそどうしてこんなところに?」

「えっと…私この神社でお狐様に油揚げをお供えしているんです。もしかしたら運が回ってきたのかなと思いまして」

「…そう、ですか。そうしたらそうなのしれませんね」

「そうでしょうか、あ、ではこれで失礼します」

「はい、またいらしてくださいね」

私は夜も遅いから早めに帰る。夜道に気をつけながら。



そんな彼女を見送る神主。

「銀ちゃん!銀ちゃんの好きな人?」

「神楽…お前は急に出てくると驚くだろ」

「えー?ダメアルか?」

「…いいけどよ…今夜は油揚げだぜ」

「ええ、また油揚げ?嫌アル…」

「じゃあ食わなくていいぞ」

「食べる!食べるネ!」

神主と巫女姿の彼女が住むその神社を見下げる1つの烏と鼠がいた。

「…人間の女に近づくなんて」

「ありゃ恋は盲目っつーもんでさァ」

「そうだな、可哀想なやつだ」

ばさりと風が吹くと烏の羽が1枚落ちた。




 

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