友情と恋愛って?








「名前さん、魚はどこで買うんで?」

「え、えぇと…いつものところで…」

「あぁ、女中さんたちがよく行く…わかりやした」

買い物袋を片手に私は沖田くんの隣を歩く。
気まずくない?え、なにこれ、ナニコレ。沖田くんは、気まずくないの…?

「……名前さんは素直な人だ。顔に出てますぜ」

「え!」

「なに話していいかわかんねェって」

「…沖田くんの、その気持ちには答えは出せないって、言ったら傷つく…?」

はいには、いいえ。YESにはNOがあるように、質問には答えが必然とあるものだ。なのに私はそれが分からなくて答えが自分の中で出せない。銀ちゃんは好き?好きです。沖田くんは好き?好きです。でも、その好きってどの好き?と言われるとそれが恋か愛か友かわからない。こんな大人、嫌だ。

「…傷つく」

「うっ…」

「なんて、いいやせんよ」

「え…」

「そんなのすぐ出たほうがおかしいってモンでさァ。名前さんは旦那が好き、でも俺も名前さんが好き。なら答えは難しいってモンでさァ。俺は、答えなんてすぐ出さなくていい。でも」

沖田くんは私の前に来て手を繋ぐ。その彼の目は、本当の目だった。

「俺が本気だってことは、覚えていてくだせェ」

「……は、い…」

「ん、早く行きやしょう」

「え、あ、うん…!」

やだよ、こんなの。心がドキドキする。これは、銀ちゃんと同じドキドキなの?
私はそんなことを頭で考えながら沖田くんの後ろをついていった。

「アイツ…!」

ギリ…と沖田と名前を見る人影が1つ。









「さて、出来ましたよー!」

「うわー!名前ちゃんのご飯だ!しかも今日は味噌煮?」

「はい、沢山あるので食べてくださいね」

「やった!俺これ好き!」

ざわざわと屯所の食堂を騒がしく皆が手に取る食事。本日は味噌煮と白米、つみれのすまし汁と冷奴とデザートはゼリーだ。
食堂の物を取り各自席につきわいわいと食べる。

「お、今日は味噌煮か」

「近藤さん、嫌でしたか?」

「いや、名前の作った飯は美味いからつい食べすぎちゃうよ」

「よかったです。沢山食べてくださいね」

近藤さんがお盆に品物を取りながら話しかける。私はすまし汁を注ぎながらお盆に置く。

「いい匂いなモンだ。よく出来てらァ」

「土方さん。はいマヨネーズです」

「ん、あんがとよ」

「かけすぎは良くないですからね」

「わかってるっつーの」

マヨネーズをこれでもかと使う土方さんを苦笑いで見送る。カタンと目の前にお盆を置くのが、沖田くん。

「名前さん、すまし汁のつみれ、俺は3つ」

「えぇ…ちゃんと考えてやってるのに…じゃあおまけで」

「お、やりぃ」

沖田くんもすまし汁が入った器を置くとテーブルについてご飯を食べる。なんかホッとしてしまった。明日からは女中さんたちが帰ってきてここまでやらなくて済むのがホッとする。流石に1人ではきついものがある。
隊士さん達がモリモリ食べている姿を見るとホッとする。今日もうまく出来てよかったと。

銀ちゃんたちは食べてるかな。…食べてるよね。流石に屯所で作ったものは残りそうはないから持っていけないが、今度何か持っていこうと考える。
心に引っかかりを覚えながら、日々生活することになるだろう。その質問には、ゆっくり答えようと確信した。







「ん、じゃあお疲れ様」

「はい、お疲れ様です」

「気をつけて帰れよ。総悟のやつは今風呂入ってるから、見送れねェが」

「はい、わかってますよ。ではお疲れ様でした。また明日よろしくお願いします!」

送りにきてくれた近藤さんと土方さんに話をかけて頭を下げ、帰路に着く。まだ7時ごろだがあたりは暗い。気をつけて帰ろうと足を急ぐ。



「ちょっとあなた」

「え、えぇと、あ」

「話があるんだけど」

「さっちゃん…わかった」

目の前にはうす紫色の髪を靡かせるさっちゃんの姿。私はその後ろをついて行った。








「ちょっとあなた、銀さんとストーカーはやめたの?」

「え?」

「最近ストーカーの出勤率が少ないわ」

「え、そ、そうかな…」

「少し前は電信柱の影から見てたり、不法侵入したり。あなたらしくないわよ」

「文字で表すとよりやばいやつじゃん私…。
………さっちゃんは、恋ってなんだと思う?」

ファミレスで2人、さっちゃんはお茶、私はコーヒーを飲みながら話す。
確かに最近、というかストーカーぽいことはできなくなっていた。それは数日前、真選組の台所で銀ちゃんに抱きしめられてからだ。

「恋?あんたそんなこともわかんないわけ?
恋ってのはね、その人を見ててドキドキしたり、その人とずっとそばにいたいとか、四六時中ずっとその人を考えちゃうとかよ。私はいつでも銀さんのことを考えているわ」

「…そう…」

ドキドキ、ずっと考えている?2人のことを、ずっと考えているよ。

「でも!気をつけなきゃいけないのは、それが、恋か、友情かってことよ」

さっちゃんは私にずい!と近づき話しかけられた。メガネをカチャリと掛け直し話す。

「恋はさっきも言った通りよ。でも恋と友情は全くの別物よ。友情は所詮友達止まりで、恋には発展しないものよ。友情って、お互いのことを想う事は同じでも、恋には発展しないものなのよ」

「…そっか…」

「……あの真選組のあの子?」

「え、」

「なんか言われたの?」

さっちゃんはお茶を啜りながら私に話しかけた。その目は、確信を持っている目だった。

「…好きだって、言われた」

「そう…。なかなか見る目あるじゃない?」

「え、見る目?」

「ち、違うから。あんたのこといいライバルだとか思ってないから」

「…さっちゃん…」

「ところで、どうすんのよ。返事」

「それ、は……」

「…返事は早いほうがいいわよ。あなたも、彼も、次に進むことができるからよ」

さっちゃんはズバリそう言った。そうだよね、わかってる。わかってるけど、わからないよ。

「…この想いが、なんなのかわからない…から、返事もできないし…2人を見ててもドキドキするから…」

「…あなた、ちゃんと考えることね。そのドキドキは、恋か、友か。ごちそうさま」

お茶のお金をチャリンとテーブルに置いてファミレスを出るさっちゃん。
私、酷いこと言ったかな。

「わからないよ…」

恋とは、難しいものだ。




\ドキドキの行方を知りたい/






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