恋とは、どういうものなのだろう。







この前銀ちゃんに会いに行った帰り、パトカーの中で沖田くんに言われた言葉。

ー俺じゃダメですかィ

…どういう意味だろう。意味なんて、わかっているのに。

「…い」

私はどうすればいいのかな。わからないよ。

「おい!苗字!」

「ひ!はい!って土方さん。やめてくださいよ驚きましたよ」

「驚いたのはこっちだ。洗濯物持ってずっとボケーっとしてるからよ」

「え…あ…」

私は自分の手にしているものを見てそうだった、今は洗濯物の途中だったと思い出した。いけないいけない、仕事には集中しなくては。女中さん達がまだいない今朝から夜まで真選組の屯所にいることが多くなっているから、必然と沖田さんと会う確率も高いというわけだ。

「すいません…」

「…なんかあったのか」

「いえ!大丈夫です!」

「………総悟か」

「………」

「ダンマリは肯定と捉えるぞ」

ふー、と白いタバコの煙を吐く土方さん。それは空に消えてなくなる。私も、こんなふうに…。

「恋ってなんですかね…」

「ゴホゴホ!」

「大丈夫ですか?土方さん」

「突然何をいうかと思えば」

「恋って難しいですね」

「…あぁ…。まぁ、名前が元気ないと心配する隊士がいるから元気出せ。な?」

「はい…」

土方さんに頭をぽんぽんと撫でられたあと、よし!と着物の袖をまくる。今は仕事!仕事だ!その姿を見守る山崎、原田の2人。

「あぁ、名前ちゃん今日も頑張ってて偉いな…」

「そうだね…」








隊士さん達にご飯を作り終わったあと片付けをして1人になった食堂で遅めのお昼をとる。
そういえば銀ちゃん達何食べてるんだろう。そういえば今日は神楽ちゃんがご飯当番ってカレンダーに書いてあったっけ。また卵かけご飯かな。
そんなことを思い出しながらお味噌汁を啜る。

「あ、名前さん」

「あ、おき、たくん…」

「…遅めのお昼で?」

「う、ん…」

気まずい、沖田くんの顔を見ると言われた言葉を思い出す。私はどうしたらいいのだろう。

「…名前さん、俺の言葉にどうすればいいかわからないって顔してまさァ」

「う…」

「恋なんてどう転ぶかわからないし、いつ旦那から俺に移るかわからないからこそ面白いってモンでさァ。だから、俺言葉はあまり気にせず過ごしてくだせェ。でも」

「…?」

沖田くんは私に近づき両手で私がいるテーブルの淵を掴み、沖田くんの腕の中にいる体制だ。

「俺がいつでも、旦那から名前さんを掻っ攫う準備はできてることをお忘れなく」

「お、きた、くん…」

「んじゃ、今日のおやつは団子のみたらしでお願いしまさァ」

「え、あ、うん!」

びっくりした…。今でも心臓がドキドキするくらい緊張した。顔が熱い、心がドキドキしすぎて痛い。
私よりずっと年下だと思っていたが、事実彼は年下でも弟でもなく、1人の男性だった。

「…やだ、な…ドキドキするよ…」

私は銀ちゃんが好きなのに、変な気持ち。これは決して、違うと蓋に錠を掛ける。
決して開けてはいけないパンドラの箱なのだ。



「…総悟のヤロー…」

その姿を見て土方はふーと煙を吐く。そして食道から1人の男の元へ歩く。










「おい、総悟いるか」

「うっせェな、かーちゃん今日は日曜だぜ」

「誰がかーちゃんだ!しかも今日は日曜じゃねェ!」

「なんですかぃ土方コノヤロー」

「………名前のことだが」

「………」

「お前なんかしたろ」

「…個人の自由だろィ」

「お前が何しようが勝手だが、仕事に私情は持ち込むなよ」

「へいへい」

冷たい視線の土方と敵を見るような目線の沖田。それは2人の間にばちばちと火花さえ飛びそうな雰囲気であった。








「よし」

お団子が完成して沖田くんに持っていこうとお盆にお茶と団子を乗せて部屋に向かう。
歩いていると部屋の前で土方さんと沖田くんがなんか話していたが、何を話していたがわからなかった。

「沖田くん、お団子…です…。すみません、私お話の邪魔しちゃいましたか?」

「名前さん、ありがとうございまさァ」

「苗字…、いや、邪魔してない」

私は持っていたお盆を沖田くんの部屋の前に置きどうぞ、と部屋の中へ入れた。ほかほかとお茶が湯気を立てて香る。

「あ、土方さんも食べますか?お茶入れますよ」

「あ、いや、いい」

「そうですか…わかりました。ではお夕飯の準備しますね。なにか食べたいものとかありますか?」

「俺はないが…」

「俺ァ魚が食いたい」

もっちゃもっちゃとお団子を食べながら私に言う沖田くん。懐からメモ帳を取り出し魚、とメモをする。

「わかった、じゃあお魚メニュー中心に考えるね。ほかはある?」

私が沖田くんに問うと「いや」と言われた。魚かー…。そしたら魚屋さんに行かねばものがないと思いメモに書く。

「名前さん、魚仕入れなきゃないでしょう。俺と行きやしょう」

「え、いいの?」

「いいでしょう?土方さん。困ってる女中さんを助けるんだから」

「は……まぁ、いいが…。総悟、うつつを抜かすなよ」

「へいへい。行きやしょう、名前さん」

もっちゃもっちゃと最後のお団子を食べ、カチャリと音を立てて刀を持ち玄関に歩く。
沖田くんと2人きり……違う、そうじゃない。意識をするな。その箱には触れてはいけない感情を撫でる。そう、違う。


沖田と名前の後ろ姿を見る土方は、心の奥で恋とは、と考えていた。難しい、問題だ。
沖田は1番隊の隊長として、任務を遂行するが、1番最初に斬りかかる斬り込み隊長として現在彼はいる。そう、恋仲になっても任務のたびに、必ず生き残ると言う約束はできない、それは死に近い所にいるのが彼等1番隊である。

「…難しい、な」

ふー…と息を吐くその白いタバコの煙はどこへ向かう。




\恋 と 友/









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