さりげない告白と
曲の始まりと同時に舞台が明るくなる。
パンクバンドの衣装に身を包んだメンバーを見て、一気に歓声が飛ぶ。
服装はビジュアル系で、睦月も姫華も男のようなかっこうである。
真ん中で歌を歌っている姫華はどうみても、女には見えないぐらいカッコイイ。
「もしかして…姫華ちゃんがうとてる?」
「歌ってますわ。」
白石の質問に光が即答する。
「よくみえんたい!」
千歳は自分の視力が悪いことに今更気が付いたようにして言う。
「ヴォーカルめっちゃかっこええやん!」
金太郎が目を輝かせて言う。
「金太郎さん、視力よかったですもんね。」
小春が金太郎を見て言う。
「曲、男もんちゃう?」
「そうですね。しかも最近売り出し中のアーティストですわ。」
謙也の問いに財前が答える。
「まぁ姫華、歌上手いしな…」
「しっかし…えらい姫華ちゃん素敵やなぁ〜…ロックオンしそうやわ!」
「浮気か!!」
小春の言葉を聞き逃さなかった一氏。
1曲目が終了した。
また一気に歓声があがる。
「えーありがとうございました!1曲目はS.IDの乱舞メロディでした。」
椋がドラムに座ったままマイクを持って話し出す。
「普通やったら、ヴォーカルが会話すんねんけど、俺らのとこのヴォーカルは始めてで、よーわからんって文句言われたんで、今日は俺、水無月椋も一緒に司会進行をしていきたいと思います!で、まず、メンバー紹介!」
椋がそう言った瞬間に歓声がまたあがる。
主に女子からが大きい。
「えーじゃぁ、みんなから見て左!ベースで2年の市橋達也!クール担当!とにかく言うこと聞かへん反抗期!パパは結構困ってます。」
椋がそう言うと、みんなが笑う。
「で、右手!ギターは3年睦月愛!」
愛がお辞儀をすると拍手がとぶ。
「んで、我等がヴォーカル2年忍足姫華!ギターもたまに担当するらしいです。」
『らしいじゃないよ!ちゃんとやるよ!』
「あ、姫華喋る気になったんか?変わろうか?」
『ええわ。』
「とまぁ、ツンデレな面がある子です。」
『別にツンデレちゃう!』
「ちなみに、お兄ちゃんが大ッ嫌いです。」
『いや!嫌いちゃうで!どっちかってったら好きや!…嘘や!』
「どっちや!」
『…え〜はい、じゃぁ、次の曲行きましょうかね、次もまたS.IDで!今度はバラードです!お聞きください、rain』
「え、ちょ…!」
椋が準備する間もなく、愛がギターを弾き、達也がベースを鳴らす。
姫華が歌い始める。
「先輩」
財前が謙也の方を見て、謙也を呼ぶ。
「なんや!」
「うれし泣きは?」
「しとらへんわ!」
「っち…!」
「いや、なんでそこで白石舌打ちすんの!?」
謙也はそう言ったが、2人は姫華の歌声を聴いていて、シカトされた。
姫華…!本間にお前は…!ええこや…!
若干ほろりと来た謙也であった。
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