その子を知った
 


 『ふえ!?』

急に手を後ろにひっぱられてビックリした姫華は拍子抜けた声をだす。

そして、白石の方を見る。


 『どしたんですか?』

 「あ…えっと、」


とっさの自分の行動にどうすればいいか分からなくなった白石。
未だ手は取ったまま。


 「せや、名前、教えてくれへん?」

 『…うちのですか?』

首をかしげて問う姫華に白石は少し顔を赤くする。

 「せや」

 『忍足姫華言います』


一瞬白石がショートする。


 「忍足…?………まさか謙也のい「何やってんねん!!!!」


突然のでかい声にビックリする2人。
姫華は白石の後ろに視線をやり、白石は後ろを見る。


そこには謙也が2人を指差して驚いた表情をしている。


 『謙にぃ、もぉちょい声ちっそうできへんの?』


姫華がやれやれとした表情で謙也に言う。


 「…兄弟なん?」

白石が驚いた表情で姫華を見ながら聞く。

 『ええ。いつも謙にぃがお世話になってます。』

深々とお辞儀をする姫華。


 「お前等何やってたんや!?」

 『名前聞かれてただけやけど?』

 「別に変なことはしてないで?」

白石がひょうひょうとした表情で謙也に言う。

 「とりあえず!手を離せ!」

めちゃくちゃ眉間にしわをよせて謙也が言いながら二人の間に割り込む。

 「あ、ゴメンな。」

 『いえいえ。』

白石の謝りを笑顔で許す姫華。
その笑顔を見て白石は顔をまた少し赤くする。


 「まさかお前気に「さーて、授業遅れんようにせなな、いくで謙也。バイバイ姫華ちゃん。」気安く姫華のことちゃん付けすんな!嫌がってるやろ!!」


 「いやか?」


謙也にそう言われ、白石は姫華を見て聞いた。


 『全然嫌ちゃいますよ。気軽に名前呼んでくださいね。』


ニッコリ笑って答える姫華。


 「本間か?ありがとうな!姫華ちゃんは俺のこと好きに呼んでーな!これからもよろしく!」


白石も笑顔で姫華にそう言い、謙也をひっぱって音楽室に向かった。


 「白石のアホー!!」


謙也の叫び声が廊下中に響いた。




その後音楽の授業中――


 「…本間似てへんよな」

頬杖をつきながら謙也を見て呟く白石。

 「ほっとけや!」

少し涙目でうったえる謙也。

 「せや、言うとくけど俺姫華ちゃんがお前の妹やからって諦めるつもりはないからな。」

 「いや、諦めてくれ!」

 「謙也…この様子じゃ姫華ちゃんにベタ惚れやろ?」

 「悪いんか!」

 「安心しぃ、俺が義兄弟になってもちゃんと仲良うしたるから。」

 「なんでもう結婚前提やねん!財前といい白石といい…最悪や!」

 「…!財前も?」

 「せや…同じクラスやしなあの2人。」

 「ふーん…(負けてられへんわ…!)」




そのころ2年7組――



 「ふぁ〜あ…ヤバ、美術行くの忘れとったわ。…まぁええか」

教室で寝ていた財前。
今日何があったのかはまったく知らず、6時間目前姫華に怒られたのは言うまでもない。







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