移動教室の遭遇
 
白石視点――



決まって毎週水曜日の昼休み


人がまったく居らん廊下で


必ず俺はあの子に会う。


赤茶色の綺麗な髪をした子。


その子はいっつも友達と笑ってて、笑顔が可愛いなって思いながらすれ違ってた。


友達の方は俺のこと凝視してすれ違うけど、その子だけ俺のことを見ずにすれ違う。


テニス部に興味ないんやろうなっていっつも思う。


毎週水曜日


すれ違うごとにするあの子のシャンプーの匂い


フローラルみたいな香りが凄く合う子


せやけど喋ったことがない。



喋りたい…何回思ったことやら。



そんなことを考えながら歩いていると前から見慣れた赤茶色の髪をした女の子が通りかかる。
今日は1人なんやな。
赤茶色の髪をなびかせて歩くその子。
声が聞いてみたい。
でも、できずにすれ違う。
またいつものようにフローラルの香りがする。



 『白石先輩?』

ふいに後ろから声がしてビックリして振り返った。

 『これ、先輩のですか?』

いつの間にか落としてたっぽい俺のシャーペン。
普通落としたら気づくのに…気づかへんかった。
しかも筆箱あいとるし…!


 「せや、ありがとう。」


俺は手をだして、その子からシャーペンをもらう。


 『どういたしまして』


ニッコリ笑う彼女は、いつもと同じ笑顔を見せてくれた。

俺の名前知ってたんや。
テニス部興味ないかと思ってたのに…


 『ほな、これで…』


軽く会釈をして彼女は再度歩き出そうとする。




まだ…行かんといて…



とっさに俺は彼女の手をとった。



 
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