君の好きなうた
『また明日ね〜』
そう言って愛しい彼女は手をふった
ああ、今日も言えなかった
そんなおれはヘタレなのか
勇気を振り絞って一緒に帰ることまでは誘えるものの…
そこから先へ勇気を振り絞って
好きだと伝えれない
一緒に歩いているときに感じる彼女の体温も愛しくて
思わず握りたくなってしまう
でもそれもできなくて
拒まれることを恐れてしまって
一歩も踏み出せずに今日が終わる
彼女が自分の家に向かう曲がり角まで目で見送って
見えなくなった瞬間に深いため息をつく
「俺らしくねェな」
そう呟いて今まで向いていた方向と逆を向いて歩き出す
それと同時に口ずさむのは
いつも彼女が鼻歌で歌ううた
君の好きなうた
(これを歌っていればまだ君と一緒にいる気がして…)[ 1/6 ] [*prev] [next#]