今日のガゼル様のサッカーは荒れている。何かに対して怒りをぶつけて、押さえて、そして時折泣きそうに顔をしかめ、唇を噛み締めている。俺から見ればそうとしか見えない。
いつものクールなガゼル様じゃない、冷静でもなく平常心さえも定まっていない。ガゼル様の汗が涙のように見えた。
「おいヒート、集中しろ」
「はい」
バーン様に注意されて俺は目線を外した。今日もまたダイヤモンドダストとの練習試合だ。昨日もしたのに、今日はガゼル様からの申し出だった。
「ガゼル様!?」
ダイヤモンドダストのメンバーが一瞬のうちに集まっていた。ガゼル様が倒れたらしい、俺も急いで駆け付けたらガゼル様は顔色が悪くいつもの健康的な肌色ではなく青白かった。
クララやリオーネ達がガゼル様を呼んでもガゼル様は気を失っているみたいで、俺は内心酷く慌てた。ただ立ち尽くしてガゼル様の顔を見つめるしか出来なかった。
「おい!早くガゼル様を運べ!」
「ゴッカ、ガゼル様を!」
みんな明らかに動揺して、落ち着いているのはアイキューやフロストくらいだった。
「おまえら落ち着け」
バーン様が俺の横を通り過ぎ、ゴッカの腕の中にいるガゼル様摘んでお姫さま抱っこに持ち直した。な、なんて適当な扱い方だ。
みんなが不安そうにバーン様を見つめ、一部は睨んでいる奴もいるがバーン様はそれに気付かないフリをした。
「リーダーのことはリーダーに任せろって、ほら解散解散」
手をひらひらと振るとバーン様はグランに任せるから安心しろとダイヤモンドダストのメンバーに告げた。それに一安心して皆も散らばり、俺も部屋に戻った。



「おーいグラン、寝てんのか」
部屋の扉を叩いてもグランは出て来ないし、俺もガゼルを抱える腕が疲れてきた。勢いで連れて来たけどこれでよかったのか、やっぱりダイヤモンドダストの奴らに頼んでいればよかったかもしれない。面倒臭い、ガゼルをここに置いてグランを驚かせてやろうかと悪巧みも考えたけどダイヤモンドダストに凍てつかされそうでやめた。
「あれ?バーンじゃないか」
「おっグラン!ったく何処ほっつき歩いてやがった。ガゼル預ける」
「え?わあ、ガゼル顔色が悪いじゃないか」
「だからおまえに預けるんだよ、ほら」
「分かった。じゃあ俺の部屋に運んでくれる?」
鍵を開けたグランの部屋にガゼルを連れて入り、ベッドに寝かせた。顔色が悪いのは確かだけど、青白いのはなんだかこいつに似合っていた。睫毛も長い、なんていうか女顔で──

「可愛いね」

「はあ?!」
「あれ?バーンも思ったでしょう?ガゼルの寝顔だよ、見るのは久しぶりかな」
「んな、な、な……ありえねえ!」
「何が?あ、ついでにバーンも看病手伝ってね」

必死に首を横に振ったけどグランにはきかなかった。



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