ガゼルが可愛いなんて、ただの間違いだろう。確かに女顔だけど、華奢だけど、別に目に止まらない。
俺はヒートと別れた後、部屋にこもって途中だったゲームを進めた。だけど眠気が襲って来て俺は後ろからベッドに倒れた。
今日の練習も疲れたけど、今日はいろんなことがあった。ガゼルのことやヒートのこと、怪我をしたガゼルを治療している時に聞いたあの声に少し驚いたりもしたし、変に顔を歪めるから珍しい物を見たとも思った。
ヒートだってあんなに顔を赤くしてガゼルが可愛いだのなんだのと、ガゼルの魅力が分かってないだとか、訳の分からないことばっかり言ってた。

『分かられたら困りますよ』

その言葉を思い出して俺は目を瞑った。



「ガゼル」
呼ばれた方を振り返れば赤髪のあいつ。私は何故か胸が熱くなるのを感じてしまった。どきどき、どきどき、こんな感覚は初めてだ。こんな感情は知らない。
「教えてやろうか?」
気付けばバーンは私の目の前に居て、鼻の先が触れそうな程に私に近付き、熱い瞳を私に向ける。溶けそうな声、触れられたらとろけてしまいそうな指先。
バーンの顔がこんなに近くにあることに、心臓が飛び出してしまいそうで怖い。何かが分かってしまいそうで私は怖くなった。バーンから離れたらバーンがまた近づく。
「おまえは俺が好きなんだよ」
それから視界は真っ赤に染まった。紅蓮に染まる赤髪が視界に止まり、その熱い唇が私を捕らえた。逃げればいいのに、私は困惑していた。視界は、真っ暗になった。



「うっうわあぁああああ!」

赤、赤、赤

目がチカチカする。頭から赤が離れない。ふざけるな、私が貴様を好きだと?好適としてか?それすら私は絶対に認めない。
髪をガシガシと掴んで引っ張った。収まらない、腹が立つ、頭が赤でいっぱいで私はめまいがした。

染められそうだった。

あの赤に、私は確かな怒りを覚えた。夢にまで出てきて、相当私を困らせたいのか。なるほど私があいつの顔を見ると胸が熱くなる理由が分かった。憎い、嫌い、目障り。そう、これだけだ。他は余分だ、捨てろ。ゴミ箱に捨てて蓋を閉じてしまえばいい。
「……そうだ、私はあいつが嫌いだ」
憎い、嫌い、目障り。頭の中にある赤を無理矢理消した。これでいい、私はまたいつもの凍てつく闇に戻る。これでいい、嘲笑うと私の頬に何かが垂れた。



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