食堂に着いたら私は先に座っているバーンを横目に見てなるべく近くに座らないようにした。が、何故かヒートに連れられバーンと正面で向き合うことになった。
ちゅるちゅると冷やし中華を口に詰めながら目を泳がした。凄く食べにくいのだが、目の前に居るバーンはカレーを大口で食べていた。バーンの隣に座ったヒートもカレーうどんを食べている。私は途中で箸を置いて席を立った。
「ガゼル様?」
「もう食べ終わった」
「まだ半分あんじゃん」
「私には充分」
食器を戻して私は二人の視線に刺されながらも食堂を出た。あんな正面で向かい合ったことなんてないし一緒に食べたこともない。
不愉快な気分で私は自分の部屋に戻った。何が不愉快なのかは分からないけど、慣れないことをするのは好きじゃない。部屋の扉を閉めて一息ついた。



俺は先に出たガゼルが怒ったようにも見えたけど気にせずに最後の一口を食べた。相変わらずあいつは少食だ。食堂で顔を合わせる時でもご飯をちまちま食べたりフレークをつついたり。まあ目が合っても普通に逸らされるんだが。
ヒートが食べ終わるのを待っていたら途中のところで箸を止める。
「えーっと、バーン様、あの」
「ん?」
「ガゼル様、ってどう思います?」
「少食野郎」
「あ、あはは……ですよね」
「ガゼルがどうかしたのか?」
ヒートの顔を見れば照れ照れと頭を掻いてにやけていた。
「お?なんだなんだ」
「俺、…………可愛いと思うんですけど」
「……か、可愛い?」
あのガゼルが可愛い?ブフッと吹き出して俺が笑うとヒートは更に顔を真っ赤にして困ったように眉を垂らす。
「何、おまえ、まさか惚れたとか?グランじゃあるまいし」
「で、ですから!バーン様には分からないんですよ……ガゼル様の魅力が」
「分かりたくねー」
レアンやバーラなら未だしもガゼルとか、あり得ない。これじゃあグランが円堂に惚れたのと同じじゃねえか。
「分かられたら困りますよ」
するとヒートは落ち着きを取り戻して箸を持った。
「バーン様が惚れちゃうかもしれませんから」
「けっ」
まさか、と俺はヒートに吐き捨てた。ガゼルの魅力なんて興味の欠片もない。
俺の返事に気をよくしたヒートは隣で笑い、うどんをすすった。



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