「ガゼル様」
今から練習試合というところでスパイクの紐を結んでいたら、クララが横から話し掛けてきた。
首を傾げればクララは私の手のひらに絆創膏を乗せた。
「怪我をしたら使ってくださいね」
「あ、ありがとう」
グラウンドに走って行ったクララの背を見送り、私は手のひらにある絆創膏を見つめていた。可愛らしいピンクの花柄だ。クララの些細な優しさに暖かくなりながら、ポケットにしまった。



試合開始のホイッスルで私はボールを持って走った。今日の練習試合はプロミネンスとだ。マークを抜いてリオーネにパスをして前を走った。
「ドロル!」
ボールを持ったドロルを呼んでパスをもらった瞬間、バーンのスライディングに私は対応出来なかった。素早くボールを守りクララにパスを回したが、私は見事転落。
多少の足はひねりはしたが大事には至らない。メンバーが心配そうにチラチラと私を見る。大丈夫と頷いて私は身体を起こして服をはたいた。
「アトミックフレア!」
バーンが我々からゴールを奪ったみたいだ。私もこうしてはいられないとホイッスルが鳴ると同時に攻めた。
バーンを抜いたら後は気を緩めることなく走ればいい。レアンのマークを突破して私はノーザンインパクトでプロミネンスのゴールを奪った。
少し足は痛むが私は自分のポジションへ戻ろうとした。けれど目に入ったヒートが顔を歪めていて足を止めた。ヒートの足を見れば靴下で隠れてはいるが血が滲んでいた。スライディングをして切れたのだろうか。
試合のホイッスルでまた始まる。怪我人は気になるが私は試合に集中することにした。
前半の結果は一点差でダイヤモンドダストの有利。みんなが休憩に入ったところで私は濡れタオルを持ってプロミネンスの場所に向かった。
「なんだ?珍しいなガゼル」
「いや、ヒートに用があるんだ」
「俺にですか?」
ああ居た、と私はベンチに座っているヒートの前で腰を下ろし、靴下を下げた。
「ガ、ガゼル様?」
「いいから」
怪我をしているところを濡れたタオルで冷まして血を拭き取った。プロミネンスのメンバーも気付いていなかったみたいだ。
そういえばクララからもらった絆創膏があった。ポケットから取り出して傷口にそっと貼った。
「これでいい」
「あ、ありがとうございます」
「変な絆創膏だなー」
「クララからもらった」
横から入って来たバーンを相手にせずにヒートの靴下を上げた。
「いいんですか?せっかくクララから……」
「気にするな、絆創膏は怪我人に使う物だ」
膝を軽く叩くと私はダイヤモンドダストのベンチに戻った。絆創膏が役に立ってよかった。



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