足首に包帯を巻かれる。私はベッドの上でおとなしくぬいぐるみを抱き締めていた。グランの手が私のふくらはぎに触れる。不愉快極まりない。
バーンの視線が痛い。あれからグランに駆け付けて治療をしてもらっているけど、バーンは部屋から一向に出ない。ただおとなしく壁にもたれていた。ああ、そういえばこいつは私の監視役だったんだ。離れないのも当たり前か。
「はい、出来たよ」
無茶なことはしないでね、と私を見上げてきたから顔を逸らした。相変わらずこいつは腹の立つ澄ました野郎だ。お人好しだかなんだか知らないけど私はこいつも嫌いだ。
「俺はもう行くけど、ガゼルは五日間外出禁止だから、バーン頼むよ」
「……グラン」
「なんだい?」
「監視役を変えてくれ。何故こいつなんだ」
「んー……でもバーンがやりたいって名乗り出たんだ。乗ってあげなよ」
笑顔でグランは出て行った。なんだと?バーンから名乗りでた?
私は鼻で笑うと布団の中に潜り込んだ。
「監視役なんて物好きだね。私を笑い種にでもしたいの?」
「……他の奴なら絶対おまえを逃がすからな」
「それが本音か、だとしたら理解に苦しむよ」
私は腕にあるテディベアの頭を撫でてあげた。まるで私と風丸のようだ。心が安らいだ。
「……ゃねえよ」
「何か言った?」
相変わらずバーンは壁から背中を離さなかった。私が言っても何も返って来なかったから黙って目を閉じた。布団の中は暖かくて眠たくなる。
「寝んのか?」
「……ダメなのか」
「ガラスの片付けしとくから寝とけ」
それでもバーンからの視線は来る。私が寝付いてから掃除をする気か、バーンのくせに意外と頭が回るな。私は布団の中で悪態を付いた。


『ふーすけ』

遠くで私を呼ぶ声に振り返った。赤い髪に金色の瞳は優しそうに目を細めて笑っていた。
小さな頃のバーンはこの頃からやんちゃで元気で、私は大好きだった。

『はるや』

私の前を通り抜けて小さな頃の自分が晴矢のもとへと走っていた。私は未だ晴矢に未練があるらしい。
好きと伝えていないこの胸の内は消えない。だからこそ本気で晴矢を、バーンを嫌いだとは思わなかった。

『でもおまえは言っただろ?嫌い、大嫌いだって』

「それは……」

『安心しろよ、俺だっておまえが嫌いだから』

「はるや、私は」

「風介」

バーンの背中に手を伸ばした。だけど届かない、私からどんどん離れて行ってしまう。早く伝えなきゃいけない、なのに焦ってばかりでついには見放されてしまった。

「はるや、はる、や」

「風介、俺はここにいるよ」

抱き締められている感触がした。サラリと、艶めかしい長い髪が私に触れた。

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