俺は隣で夕日を眺める彼を見つめた。悔しそうに涙を流し、たまに悲しそうに唇を震わしていた。
一体何があったんだと聞きたくなる。俺が居ることなど無視して泣き続けて、相当悲しいことがあったのだろうか。
「名前は?」
「ガ、……風介」
「俺は風丸」
背中をさすってあげたら、風介はすん、と鼻をすすった。涙を溜めた風介の瞳は俺をとらえ、眉を下げる。
「私は、チームのリーダーなんだ」
「へえ……」
「私は同点で、負けた」
「同点で負けるのか?」
「いや……同点は負けだと言われて、必要ないと……言わ、れて」
じわ、とまた風介が泣く。俺は慌てて背中をさすってあげた。
必要ない?一体彼はどんなチームと一緒に居たんだろうか。泣く姿が酷く脆く、俺の胸がキリと痛んだ。抱き締めてもいいのだろうか、他人の俺が、何も知らない俺が。回そうとした手が震えた。

「……ねえ、代わりに、抱き締めて」
「え、」
「だめ?」
「わ、分かった!」
肩にぎこちなく手を置いて引き寄せた。風介は俺のことは知ってるけど、俺は風介のことなんて知らない。いいのかな、こんな、恋人みたいなことをして。
風介は俺の胸の中に埋まり、服を掴んでしゃくり上げていた。俺がさすってやると落ち着いたのか深呼吸をした。
「私は、雷門を知ってる。そして私は雷門に……敗れた」
「え?それって」
「もういい、気分が楽になったから離して」
自分から離れて俺に距離を作った風介は俺を見なかった。俺が一歩近づいても風介は動かなかった。顔を上げた風介は俺に氷のような眼差しを向ける。それに驚いて掛ける言葉をなくした。
「今の君は私にそっくりだった」
まるで希望を失ったようだ、と風介は呟いた。
「でも……あ、ありがとう……君のおかげで少しだけ楽になった」
気恥ずかしそうに言うと風介は帰ろうと背を向けた。俺はその腕を掴むと、吃るように風介を呼ぶ。
「また、会える?」
「……分からない」
寂しそうに言った風介は震えていた。まるで何かに怯えるように、帰りたくないのかな。
俺は握った腕を引いて風介を商店街へ引っ張って行った。なんだ、離せ、と慌てる風介を無視して俺は街中を走った。
「ど、何処へ行くつもりだ……!」
「帰りたくないんだろう?来いよ、俺んち!」
笑顔で振り返ると風介は頬を赤く染めて小さく頷いた。なんだ、やっぱりそうなんだ。俺、まるで円堂みたいだな、と一人おかしく笑った。

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