俺は毎日この場所に来ていた。円堂と別れてそれっきりの場所に足を運んで風に当たって頭を冷やす。だいぶ落ち着いてきたけれど、もうイナズマキャラバンに戻れる気がしない。
あんな別れ方で円堂を傷つけてしまって、いまさら何もなかったような顔で戻れない。きっとみんなは俺よりも遥かに強くなって次の宇宙人と戦っているんだろう。
どうせ俺の役目はない、出ても俺は無力だということは理解出来た。俺は、無力。
俯きながら歩いていたらまたこの場所に来ていた。円堂に背を向けたこの場所にいい思い出なんて一つもない。ただ、ここに来たら円堂が待ってくれてるんじゃないかとか、迎えに来てくれるんじゃないかって勝手にいいように解釈していた。
でもやっぱり円堂は居なくて、俺は少しだけ心の奥で円堂を憎んでしまった。
川原に足を運んで、よく円堂と来たなと思い出に浸っていた。でももう隣に円堂は居ない。俺が臆病で逃げ出してしまったから。
「円堂、俺は……」
強くなりたかったんだ。宇宙人よりも、円堂よりも強く。でも願うだけでは皆無だった。
俺は隣を見た。その場所には円堂の面影だけで余計に胸が苦しくなった。
その先に人が立っていて、夕日をまっすぐに見ていた。その姿が儚くて魅入っていたら目が合った。夕日の光りに照らされて頬に一滴キラキラと流れて、涙を流していたことが分かった。
あ、と口ごもる俺にその人はまた夕日へと目を向けて涙を流していた。俺も夕日を見れば赤く赤く光っていて、眩しさに目が眩んだ。
さく、と芝生を踏む音がして振り向けば先程の涙を流していた少年が俺を見下ろしていた。
「君……雷門の?」
俺は瞬きをして意識を少年へと向けた。距離のあった姿は儚かったけれど、間近で見れば今にも消えそうで溶けてしまいそうな綺麗な瞳だ。
「ああ、でも、……抜けたんだ」
座りなよ、と隣を叩いたら少年は戸惑いながらもゆっくりと腰を下ろした。俺のことを知ってるみたいだから、きっとテレビか何かで見た子だろう。今頃円堂も、雷門のみんなも宇宙人と戦っているのだろうか、俺は惨めだ。
少年は何もなかったかのようにまた夕日を見て、俺の次の言葉を待っているようだった。
「宇宙人に負けて俺は怖気たんだ。俺が弱かったから、円堂の力になれなかった。あんなの適う訳がない、俺は……負けるのが怖くて、みんなに背を向けてしまった」
「円堂守か……」
「知ってるのか?」
俺の言葉に頷くと、今度は悔しそうに目の色を変えた。不自然にも思ったけれど、俺はそれを黙って見ていた。


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