走って走って、グランと対等に張り合えるあいつだけを頼りに後ろから迫る奴から逃げて来た。壁に張り付きながら身体を動かした。盛られた睡眠薬に舌を噛んで我慢した。
チリン、とまるで私の場所を示すかのように首にある鈴が鳴る。
「はいこれ、タンクトップとズボンだから着れるよね」
「ま、まあこれなら」
「あとこれ履いてね。ガーターニーハイ」
「女物じゃないか履けないよこんなも」
「いーから!ねっ!」
「ちょっと、グラン!」
私の靴下を無理矢理脱がすと下からぐいぐいと黒いニーハイを履かせられる。仕方なく黙っているとガーターも付けられた。上も下も黒統一で、着せられた服を見ていたら目の前に首輪が差し出された。大きな鈴が目立つ黒い首輪、私は眉間に皺を寄せた。
「私にこんな物を付けるのか」
「凄く似合うと思うよ?はい紅茶」
「……ん」
良い匂いに釣られて手が動いていた。くぴりと静かに呑むとグランは私の後ろに回って首輪を付けていた。
「すぐに取るぞ」
「まあまあ、ゆっくりしてよ」
「何を……」
かくっと首が落ちた。ね、眠い。まさかグランの奴何か盛ったな。視界が悪い中グランを睨み付けるとグランの手には……鎖、だと。
「俺が躾けてあげるからね」
「死ね!」
グランの手から逃げて前のめりに床に倒れた。
睡眠薬か、凄く眠い。
足に力を入れて立てばグランは関心していた。
「私が貴様に躾けられるなど、屈辱以外他にない」
ガリッと舌を噛んで眠気を飛ばした。口に広がる血の味に私は不快に思いながら部屋を出た。さすがのグランも舌を噛んだことには驚いていた。
「やっぱり凄いな……君は」
あんなに威勢がいいと実に躾けがいがあるよ。俺は愉快にも舌なめずりをした。
「あれ、居た」
廊下をしばらく歩いていたらプロミネンスの場所に向かっているガゼルの後ろ姿があった。だるそうに壁に手を付いて可愛いなあと微笑んだ。きっとバーンに助けを求めに行くんだろうな。少し邪魔しちゃおうか。
「ガゼル、逃げちゃダメだよ」
「!?」
静かに後ろへ回るとガゼルの肩を掴んだ。思い切り肩を跳ねさせるから苦笑いしてしまう。
「触るな!」
あーあ、また舌を噛んでるよ。
ガゼルは俺を振り切ると早足でバーンの部屋まで行きドアノブを握って扉を開く。

ガッ

ほんの少しだけ開かれた扉を手で止める。見下ろせばガゼルは涙目で睨んで来た。
くすりと笑ったらガゼルは消えろ、だなんて物騒なことを吐き出す。俺は黙ってガゼルの腕を掴んで抱き上げた。ガゼルもすぐに反応して暴れだす。
「バーン!バーンッ!!」
「暴れちゃダメだよ」
「バーン!貴様、離せ!バーン……!」
グランが静かにバーンの部屋の扉を手で閉めた。
「グラン様、ガゼル様?」
「!?」
好機、私は部屋から出て来たプロミネンスのヒートやネッパーに手を伸ばして助けを求めた。
それが、グランの手により阻まれる。ヒート達もうろたえていてメンバーと顔を合わせていた。この、使えない奴らめ!
「きさ」
「君達、これはバーンにはまだ秘密なんだ。分かってるよね?」
「は、はい。グラン様」
「む、ぐぐ」
グランの手に口を塞がれて言葉が出せない。私はただヒート達に手を伸ばすだけだった。助けて、と。

グランの最悪な悪戯が始まる予感がした。
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