部屋にはゲームの音楽とコントローラーを鳴らす音だけが響いていた。ぱき、ポテチを歯で半分に割って口周りについた塩を舐めた。
こん、こん
時計を見ればもう深夜。重たい尻を上げて扉を開けばでかいぬいぐるみを持って縮こまるガゼルの姿があった。 「どうした?」 「あ、いや……あの、」 「まあ入れよ」 「う、うん」 ほっと息をついたガゼルを横目に俺は続きだったゲームの電源を切ってベッドに腰掛けた。その場で立ち尽くすガゼルを引っ張ってベッドに座らせる。 ビーズ入りのうさぎのぬいぐるみがガゼルの腕の中でがっしりと掴まれる。それに顔を埋めて表情が伺えない。 「で、どーしたよ」 「……て」 「もっかい」 「……こわ、くて」 「何が?」 「今日グランと一緒に見た心霊ビデオ」 あほらし。俺が返事を返さないでいるとガゼルが顔を上げた。潤んでるけど馬鹿にするなと睨んでくる。 「添い寝ならグランに頼めよー」 「ふん、一番に頼んだわ」
『え?一緒に?嬉しいけど、バーンの方がいいと思うな。僕にも守がいるし、それにバーンって結構勇ましいからおばけを倒してくれるんだよ?』
いや、俺おばけ苦手なんだけど。だから昼に誘われた心霊ビデオも断った。グランはノリノリでけろっとしてるし、ガゼルは怖いくせに見たがる。グランのやつ知ってて俺のところに来させやがっていい迷惑だ。 「い、一緒に寝てくれないか?」 「…………おう」 一瞬でも可愛いと思ったら負けだ。俺はこいつのライバルだ、こいつは俺のライバルだ。頭の中でそれを繰り返して電気を切った。するといきなりガゼルがひゃあっと驚いて俺の腹に飛び付いた。真っ暗になったくらいでビビり過ぎだろう。俺はあやすように頭を撫でてガゼルと一緒に布団の中へ入った。 「バーン……暖かい」 「う」 ぴとりと背中にくっついてきたガゼルに俺の眠気は吹き飛んだ。勘弁してくれ、生き地獄だ。 「おいバーン」 「な、なんだよ」 「私を前から抱き締めろ」 背中を向けるなと殴られる。どういう要求なんだよ。俺は渋々ガゼルの方へ向くと引き寄せた。よろしい、とガゼルは言って俺に抱き付いた。ドキドキしてるのが気付かれて馬鹿にされそうだ。 だけどガゼルからは小さな寝息しか聞こえなかった。
朝、隣で眠るガゼルを起こしたら蹴りを食らった。
20100325 デレツン化
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