ぽろぽろぽろぽろ。ゴーグルに溜まった涙が床に落ちた。横顔は酷く冷たく儚い。信じたくはない、だけど現実を受け止めようと鬼道ちゃんは必死にマントを握っていた。わかってたさ、鬼道ちゃんは影山を本当に慕っていたことくらい。俺だって一度は影山に付いた身だ。だがそれは俺自身のためであり影山のためではない、力をつけるための、より強くなるために従っただけのことだ。けど鬼道ちゃんならどうだろうか。影山は死んだ。はっ、ざまあねぇな。俺はちっとも悲しくはない。だけど鬼道ちゃんは泣いた。下唇を噛み締めて、泣いた。知らねえよ、何だよこの感じムカつくな。胸が騒ついて鬼道ちゃんから目が離せない。
「泣くなよ」
「……」
「なあ」
ぽた、ぽた、涙が顎をつたい滴り落ちる。そんなにショックなのか、そんなに大切で、敬愛していたのかと思うと何故か俺の眉間にじわじわとしわが寄った。して欲しくない、あいつを想って切ない表情をするなんて、鬼道ちゃんらしくない。見てられねえんだよ。
「鬼道ちゃん」
「……」
「ん、」
なにやってんだよ俺、知らねえよ身体が勝手に動いたんだ。ほら、俺が手を広げて待ってやってんだから早く胸に飛び込んでこいよ。なのに鬼道ちゃんは俺を黙って見つめるだけだった。うわ、なんか恥ずかしい。
「……そ、すぃ」
腕を下ろそうとしたら鬼道ちゃんの足が一歩俺に近づいた。は、マジで俺が総帥とかふざけんなクズ。
「おまえはさ、泣いてくれんの?……俺が影山みたいに死んだら」
一歩一歩近づいて鬼道ちゃんは俺のユニフォームをつまんだ。そして眉を垂らして首を横に振る。あー、萎えた。そこは普通頷くところだろうが、かわいくねえ。
「おまえはそう簡単には死なないだろう」
「……はっ、言ってくれるね」
そこまで強くユニフォームを握られちゃあ、応えてやらなきゃいけねえよな。

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10.07.14
鬼道ちゃんは隠れ泣き虫
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