おまえなんかが、おまえ程度の奴が、鬼道さんを越えられるワケがないんだ。影山に見放されて何も得なくなったおまえを、誰が拾ってやったと思う。特別、鬼道さんに瓜二つのおまえにほんの少しだけ同情の感情が出ただけで、好意なんてもたれて俺は最高に困っている。部屋に戻れば、俺が与えた本を黙読していた。鬼道さんになれば、中身も鬼道さんみたいになれば、愛してやってもいい、と言ったことを覚えているのだろう。まあ、いつも適当に愛してやってるけど。
「おかえりなさい、佐久間」
「ただいま、鬼道さん」
「……」
デモーニオの笑顔が消えた。俺はなんとも思わずに荷物を床に置いてベッドにもたれた。前だったら泣き付いて鬼道さんの愚痴をこぼしたからひっぱたいてやった。デモーニオは鬼道さんが嫌いだ、自分とそっくりだから、敵対心がむき出しなんだ。泣きそうに唇を噛んでデモーニオは本で顔を隠した。馬鹿な奴、まるわかりだっての。
「なあ、そんなに俺が好きなの?」
「……すき、佐久間、すき」
「俺が好きなのは鬼道さんだけだ」
「そんな、ぅ、う」
ゴーグルから涙が漏れて頬にぼろぼろと落ちた。鬼道さんを泣かせているみたいでたまに焦る。本にぽたりと染み込み、跡が残った。そのまま鼻をすすり泣き続けるデモーニオに背を向けた。
「佐久間、捨ててよ、もう……やだ」
「おまえは捨てられるのが好きなんだな」
「違う……!」
「黙って鬼道さんになりきれよ、俺がつまらないだろう」
うずくまるデモーニオに近寄って顔を上げさせた。指で涙を払ってやり、額に唇を付けた。俺を心配そうに見つめて、そっぽを向いた。
「佐久間……鬼道に、なりきる、から」
「ああ」
「お、俺を、愛して……」
もちろん、と耳元で囁きデモーニオを抱き締めた。小さく縮こまりながら、顔をほころばせて俺の背中に腕を回した。鬼道さん、かわいがってあげますよ。ああ、佐久間、俺を愛して。

10.07.25
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