「佐久間、ボールを回せ!」
「うるさい!俺が点を取る!俺が勝つ!」
ネオジャパンとの戦いに何故レベルの満たない佐久間をスタメンに入れたんだ。俺たちと佐久間とのレベルの差は約10はある。なのに勢いだけでディフェンダーを抜いている。見ればわかる、佐久間のこの熱いプレーは勝つだけを目的に突進していると。しかし佐久間のあの歪んだ瞳はたまに寒気がするくらい鳥肌が立つ。
「俺が、勝つ!」
だがしかし勢いだけでは無謀そのものだ。相手はレベル20はあるというのに佐久間のレベルは5だ。テクニックがまだ伸びていない所為で佐久間はディフェンスラインでボールを奪われてしまった。思い切り舌打ちをする佐久間の目付きは更に鋭くなっていた。フォワードなのに俺たちの陣地に入りボールを取り返しにきた。佐久間の執念はそこまでにあるのかと冷や汗が流れた。結果はなんとかイナズマジャパンの勝利で、メンバー全員が食事をとっていた。
「……ヒート、仲間にしたいなぁ」
「スカウトすればいいんじゃないですか?」
「それがなかなか出来ないから悩んでるのー」
メトロンとマキュアの会話を耳に入れながら、そういえばもう一人の佐久間は何をしているのだろうかと思った。あいつのことだから特訓をしているだろうな。だが、今チームには別の佐久間が居る。今の佐久間なら堂々としたプレーをするが、なにせこっちに居るのは荒々しいプレーをする凶暴な佐久間だ。手におえなくて困っているだなんて口が裂けても俺からは言えない。
「鬼道、どうだ?今日の試合、俺のおかげで一点入っただろう?」
「そうだな、代表の座を奪われなかったことに関しては安心だが、試合の内容は最悪だ」
「……なんだと」
ぴくりと佐久間の眉がだんだんと吊り上がった。余裕の笑みが歪みに変わり憎しみの籠もった顔つきになった。拳を握る手は怒りで震え、そこまで逆上するのかと俺はため息をついた。
「チッ……次の試合も見てろ」
「見たくなくても見なければならないからな」
箸でつまんだ唐揚げを口に含んで顎を動かした。佐久間は俺から目線を離さずにまっすぐ俺を睨み付けていた。知らぬフリで口を動かせば佐久間はまた舌打ちをした。俺に認められないのが悔しいらしいが、俺はこいつを認めるつもりはない。


--20100707
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