「泥の中で練習なんてマキュアは絶対やらないから!」
監督に言い捨てて逃げて行ったマキュアに俺は呆れた。でもそれは俺たち男にはわからないことかもしれない、汚れるということに女性は、むしろマキュアはより嫌っている。俺はもう泥の中に浸かっているしユニフォームも汚れていた。この試合がなんの為になるのかはわからない。ただみんな監督の指示に従っているだけのことだ。バシャッと音がして小さな声が耳に届いた。
「っ!佐久間、わざとか!」
「ちゃんとパスしただろう」
相変わらず鬼道と佐久間の仲は悪かった。こいつらはいつになったら和解するのだろうか。まだ共にして日は浅いからこれからだろうけど。俺は泥のフィールドを出てマキュアを探しに行こうと足を出した。
「やめとけやめとけ、あの女に泥遊びは無理だって」
「そんなこと、誰もわかりません」
「キャプテンだって軽い気持ちでやってんだから、世界大会なめてんじゃねーの?」
不動が馬鹿にしたように笑うから俺は睨み付けた。俺のことはいい、マキュアのことを悪く言うのは誰だって許さない。おお怖い、と不動の挑発を無視して両足を外に出した。そのままマキュアの逃げた場所を追えば、マキュアは壁にボールを当てて練習をしていた。マキュアは練習が嫌なんじゃなくて泥が嫌というのは見てわかった。俺に気付いたマキュアは俺目がけてシュートを打ってきた。飛んできたボールを蹴りで跳ね返せばマキュアは威力の掛かったボールを足で受け止めてそのまま地面に落として回転を止めた。
「マキュア、練習に出ないんですか?」
「だってマキュア汚れるのは嫌!」
「キャプテンが居なければチームはまとまりませんよ」
「マキュアが居なくたってまとまってる」
「でもキャプテンなのに変わりはないです」
「うっさいなぁ……メトロンの馬鹿。行けばいいんでしょ」
頬を膨らませて拗ねたマキュアは練習に戻って行った。俺もあとをついて行き、泥のフィールドで足を止めるマキュアを見た。顔は必死に入ろうとしているがやはり抵抗があるのか身体は動こうとしなかった。
「行くぞー風丸!」
「おい!少し高いぞ……あ」
綱海の蹴った泥付きのボールは風丸を通り越してマキュアの足元にべちゃりと落ちた。ズボンや靴下が泥で汚れ、マキュアはそのボールを思い切り踏みつけた。
「よくも清潔なマキュアを汚したわね!!」
「何だその言いがかりは、俺じゃなくて綱海が……うわっ!」
風丸に大量の泥が付いたボールが飛んだ。


--20100709

メトマキュも風マキュもいいよ。
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