韓国に勝って俺たちは世界への切符を手に入れた。空港に着いて出発の時間を待っていたらたくさんの見送りや応援が来てくれた。そしてあの懐かしいあいつの姿もあった。目が合えば俺のもとへ駆け寄ってきた。
「鬼道さん!久しぶり」
「おまえをスカウトしたとマキュアから聞いてな」
「はい、また鬼道さんとサッカーが出来て嬉しいです」
手を差し出させば熱く握ってくれて、目が合えば微笑んだ。佐久間だ、あの優しくて強い佐久間。ゆっくりと手を離そうとすれば上からバシッと振り落とされた。
「なんだ、おまえスカウトされたのか」
「さ、佐久間……」
「……お、俺と同じ、顔……?」
こっちの佐久間は真帝国の佐久間の姿のまま、俺と佐久間を睨んでいた。ふんと鼻で笑い佐久間は春奈の座る椅子の隣に座った。それを見た春奈があることに気付く。
「そういえば佐久間さんが二人……なんて呼べばいいんでしょうか?被ったらわかりませんよね」
「……次郎でいい」
「じゃあ、次郎さんって呼びますね!皆さんも協力してくださいっ」
春奈は隣に座る風丸やリオーネたちに真帝国の佐久間の新しい呼び方を教えていた。確かに佐久間が来てくれたことについては嬉しいが、あの佐久間と、次郎とどうやっていけるかが難関だ。未だに俺さえも次郎は心を開いてはくれないから。
「どういうことなんだ?何故俺が……」
「あれはスパリンされた真帝国のおまえだ。今はもう別人としか言いようがないがな」
「あの時の……!まさか、暴力とか受けてませんよね?」
「心配するな、確かに皇帝ペンギン1号を打たれたが不動が手を貸してくれた」
「不動が?」
椅子に寝転ぶ不動を見れば俺たちに気付いて顔を上げた。軽く笑ってやれば不動も怪しく笑い返してきた。
「おい、いつまで話してる。もう飛行機に乗り込む時間だ」
「佐久、……次郎っ」
後ろから腕を引っ張られて転けそうになったが後ろ歩きでバランスを取った。佐久間も慌てて付いて来た。
「なんだ、鬼道」
「……いや、何もない」
いい加減前を見ながら歩きたいのだが、今度は佐久間が俺の手を取ってくれたからバランスが安定した。紳士的だな、と誉めれば佐久間は微笑んだ。そして俺を引っ張る次郎を見る。
「おいおまえ、鬼道さんが困ってるだろう、離せ」
「同じ顔見てると鬱陶しいな、おまえ代表にいらねえよ」
「なんだと……大体何が同じ顔だ、おまえは偽物だろう!」
「偽物はおまえだ。俺の方が鬼道にふさわしい!!」
すると次郎は俺を腕の中に入れて佐久間に背中を向けた。展開に付いていけない。なんだか首が絞まると思ったら佐久間がマントを掴んでいた。こいつら、最悪の対面だ。


--20100711
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